獅子王とあやめ姫
ぴしりと打たれた頬を押さえ、間抜けにもぽかんと口を開けるイーリス。

 そんな彼女を心底呆れた目で見るロファーロ。

 「何を考えてらっしゃるのですか。」

「ごめんなさい。」

「ごめんなさい、で済む話ではありませんよ。どういう頭をしていればこんな軽率な行動がとれるのか不思議でなりませんね、全く。」

「こういう頭よ。悪かったわね。」

しゅんとしてイーリスは頭を下げたが、イゼルベラは果敢にもこう言い返した。

そんな彼女の態度を見てロファーロは小言の標的を変えた。

「この件は、あの方にもご報告しなければなりませんね。」

それを聞いた瞬間、世界で一番苦い虫を噛み潰したような顔になるイゼルベラ。

美少女が見せたこのとんでもない顔を、イーリスは一生忘れることはないだろうと思った......。
< 123 / 176 >

この作品をシェア

pagetop