獅子王とあやめ姫
彼女の話の6割はお兄様、つまりティグリス王子の話だった。

隣国の使者のヅラを見破った幼い頃の愉快な話から剣術の大会で名前を隠して出場し見事優勝した武勇伝まで、たくさんのお兄様自慢を聞かせてくれた。

イーリスも、暮らしていた街での出来事をぽつぽつと話していた。

「そう......助かるといいわね。」

盛り上がっていたお茶会も、アイアスの母の話題になるとしゅんとした空気になってしまった。

「私がどうにかしましょうか?薬くらいならお渡しできるわよ。」

降って湧いたような救い話に、弾かれたようにイーリスは顔を上げた。

「えっ...!?いいんですか!?」

「ええ、もちろん。あなたとそのアイアスのためよ。」

自信満々に微笑むイゼルベラに深々と頭を下げる。

「本当にありがとうございます。」

「いいのよ。私達お友達でしょう。」
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