獅子王とあやめ姫
荒々しい気候に負けず、人々は活気づいている。

いや、この気候だからこそ町衆は生き生きとしているのだろうか。

皆、曇天の下でも輝くような金髪に蒼い目が光っている。

それにこの整備されきった道。

今ティグリス達の乗っている大きな馬車が3台は余裕で通れそうな道の脇には乾燥に強い街路樹が植えられ、石造りの大きな建物が軒を連ねている。

数年前まではここまで繁栄していなかったはずだった。

もちろんパルテノ国の町も大きな道もあるがそれもこの道の半分程度で、石造りの店の通りもこの国ほど長く続かない。

(国王レオン…あなどれないな。)

クレータの国民性を感じ取ったような気がして、ティグリスは固い椅子に座り直した。


* * *


イーリスが城に滞在するようになってから、1週間が過ぎた。

顔の腫れもずいぶんと引き、なんとか見られる顔にはなっていた。

身の回りを世話してくれる城内の人とも少しだけ打ち解けたようだった。

といってもパピアやイゼルベラと、その周りの侍女たちくらいだったが。

パピアやイゼルベラと談笑している間、イーリスはテリのことを思い出していた。
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