獅子王とあやめ姫
胸の高鳴りを抑えながら2人は階段を駆け下りた。

「お兄様……!」

イーリスの手を振りほどき、息を切らしながらイゼルベラは兄の腕の中に飛び込んだ。

微笑ましくこの兄妹を見つめる周りの従者達。

フィストスも出発前と同じように眉間にシワを寄せながら馬車から降りてきた。

「やぁ、イゼルベラ。」

琥珀色の目を細めながら妹の頭をくしゃくしゃになでるティグリス王子。

「お帰りなさいませ!クレータ国は、どうでございましたか!?レオーネ陛下はどんなお方でいらっしゃいましたか!?」

「ああ。とても良いところだったよ。レオーネ陛下は…少し気難しそうだが良い統治者だ__。」

「そう、それは良かったわ!あとね、お兄様……。」

兄が言い終わるか終わらないかの内に言葉をつぎ出すイゼルベラ。

(いいなぁ、仲が良くて。)

少し羨望の眼差しで、仲睦まじい容姿端麗な2人を見つめていると、ティグリス王子がこちらを見た。
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