獅子王とあやめ姫
「…!」

何故か慌てて目をそらしてしまったイーリスに、王子は優しく笑いかける。

「元気そうで良かったよ。傷も大分消えたみたいで安心だ。」

「…本当にありがとうございます。」

琥珀色の瞳が夕日を照り返してとても眩しい。

イーリスはうやうやしく頭を下げた。

「まあ、イーリスったらガチガチじゃない!だめよ、もっと肩の力を抜かなきゃ!」

無駄に緊張しているイーリスに後ろからガバッと抱きつくイゼルベラ。

兄に会えたのが余程嬉しいのか、それはものすごい勢いでイーリスはつんのめってしまう。

「うわっ、ちょっと!イゼルベラ。」

くだけたイーリスの口調に、おやとティグリスは眉を上げた。

「随分仲良くなったんだな、二人とも。」

「ええ、そうなの!ところでお兄さま、お土産は?」

イゼルベラが楽しそうに答えるのを聞きながら、イーリスはどこか違和感を感じていた。
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