獅子王とあやめ姫
 パピアの答えが意外だったのかメリッタは目を丸くした。

 「厳しい…っていうと?」

 「前はイゼルベラさまが色々なものを持ってきて下さっていたんだけど。…お菓子とか果物とか、本とか。今はティグリスさまは私が厨房から運んでいく最低限の食事しか召し上がらせないのよ。食べ物だけじゃなくて、本や服まで。人なんて言語道断。…それにフィストスさまの配下の方が見張ってらっしゃるの。衛兵とかでおおっぴらには出来ないけど、こっそり守ってるって感じで少し怖いわ。」

 「そう…それでイゼルベラさまはご機嫌があまり良くないのね。」

 地獄耳で仲間内で有名な、王女の世話をしている侍女が納得したように言った。

 王女の気難しさは使用人たちの間では有名だった。

 兄上のティグリス王子も父王も知らないわけではないが彼女も女の子、猫を被ることくらいはするのである。
 
 「ティグリスさまも、私たちの身にもなってほしいわ。いらいらしたイゼルベラ様ってほんとに手がつけられないんだから。牛みたいの怒るのよ~?」

 「ちょっと、王女さまに対して何言ってんのよ!」

 パピアは笑いながらたしなめた。

 だがしかし、心のなかは穏やかではなかった。
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