獅子王とあやめ姫
 城中に知れ渡っている姫の性格。

 今まで何人もの各国の姫君や令嬢がやって来たが、王子に気があるかどうかも関係なく、事故や病が原因で予定よりも早く帰国してしまっていた。

 特に南のザラサ王国の姫ぎみが塔の階段で足を滑らせ頭を打ち、痙攣しはじめた時は城中の者に大きなトラウマを植え付けた。
 
 確証はないが、イゼルベラの人間性を知っている侍女たちは、ザラサ王国の姫ぎみでなく訪問者たちの不幸は彼女が一枚噛んでいるのではないかと踏んでいた。

 王子の部下からイーリスの世話を頼まれたとき、正直生きた心地がしなかった。

 大事な兄を町娘にとられ、イーリスに対してあからさまに態度に出すのだろうと思っていたが違った。

 彼女にはなんとも優しい王女の姿しか見せておらず、逆にそれがパピアにとっては不安だった。

 (何か、腹のうちで考えてらっしゃることがあるんじゃあないかしら……。)
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