獅子王とあやめ姫
 食事の毒味を徹底することはもちろん護衛を置き、訪問者は王子と左大臣以外は拒絶、イーリスの身に万が一のことが起こらぬよう細心の注意を払っていた。

 それに一日一回は王子自ら直接様子を見に行く始末。

 妹には自分からほとんど会いに来ないくせに。

 右大臣がイーリスの顔を見に行ったと侍女から聞いた時は、腹立だしさと寂しさが渦巻いた。

 人と国を動かす大きな力をその手に握るラコウンはいとも簡単に兄の手中を覗き、政に関しては蟻ほどの力も関係もないイゼルベラは立ち入ることは叶わない。

 権力争いの渦中から、ポイとほっぽられたような思いだった。 

 「イーリスさまとお分けになっては?」

 後ろから聞こえてきた侍女の提案でイゼルベラは引き戻された。

 「ダメよ、イーリスには今会えないのよ。もういいわ、やはり頂くのはよすわ。」

 商人の顔も見ずにほとんど呟くように言うと、イゼルベラは部屋の扉を開けた。
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