獅子王とあやめ姫
どちらへ、と声を上げたトリーフィアにはなんだか頭が痛いのと仮病を使う。
なんだか沈むというか、やるせない気分だった。
後ろで侍女たちが顔を見合わせたのが目の端に入ったが気のせいだと言い聞かせる。
柔らかい赤い絨毯をしばらく踏みつけるように歩いて、向かいの塔への渡り廊下へ足を踏み入れた。
廊下の下に中庭が広がっているのが見下ろせる。
ここは三階で、庭師が丹精込めて整えている見事な庭園を見るには充分な高さだった。
せっかく彼らが汗水垂らして働いても、城中の者たちは自分達の仕事や椅子にしがみつくのに必死で、彼らの働きを目に留めるものは少ないだろう。
(私は見てるわよ。)
石の手すりに手を滑らせ歩きながら労いと共に中庭を見る。
突然、前を見ていなかったせいで誰かにぶつかった。
「!ごめんなさい。」
とっさに謝って相手を確認すると、ぶつかったのは廊下を歩く者を雄々しく見つめる獅子の像だった。
正面に回り込んでみると、その形相はさらに迫力を増した。
最近までこんなものはなかった。
誰が置いたのだろう。
「あなたはどちら派?お父様?お兄さま?」
一言何気なく呟いてそれに寄りかかったが、小さく悲鳴を上げた。
なんだか沈むというか、やるせない気分だった。
後ろで侍女たちが顔を見合わせたのが目の端に入ったが気のせいだと言い聞かせる。
柔らかい赤い絨毯をしばらく踏みつけるように歩いて、向かいの塔への渡り廊下へ足を踏み入れた。
廊下の下に中庭が広がっているのが見下ろせる。
ここは三階で、庭師が丹精込めて整えている見事な庭園を見るには充分な高さだった。
せっかく彼らが汗水垂らして働いても、城中の者たちは自分達の仕事や椅子にしがみつくのに必死で、彼らの働きを目に留めるものは少ないだろう。
(私は見てるわよ。)
石の手すりに手を滑らせ歩きながら労いと共に中庭を見る。
突然、前を見ていなかったせいで誰かにぶつかった。
「!ごめんなさい。」
とっさに謝って相手を確認すると、ぶつかったのは廊下を歩く者を雄々しく見つめる獅子の像だった。
正面に回り込んでみると、その形相はさらに迫力を増した。
最近までこんなものはなかった。
誰が置いたのだろう。
「あなたはどちら派?お父様?お兄さま?」
一言何気なく呟いてそれに寄りかかったが、小さく悲鳴を上げた。