獅子王とあやめ姫
(何これ、ちゃんと立て付けられてないじゃない!)

 像が台座の上を滑るのだ。

 油断して身を全て預けていたら中庭に真っ逆さまだった。

 重い像を戻し、改めて見つめる。
 
 これ、お兄さまに見せていただくはずだったクレータの石像だわ。

 イーリスに邪魔をされて叶わなかったが。

 そう思った瞬間、何かがぽつん、と心の中に降ってきた。


   *     *     *


「よし、それでは始めようか。」

 ティグリスの言葉に、イーリスは大きく息を吸い込んだ。
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