獅子王とあやめ姫
 痛々しい処置が施されはじめた。

 慌ただしさがその場の空気を支配し始めたその時、背後の階段から靴の音が近づいていた。


   *   *   *


 塔へ入ると、兄の動揺しきった声が不安定に響きながら耳へ届いた。

 らしくない声色に、抱いていた好奇心の中に少しの不安が混ざる。

 せき立てられるように階段を上りきると、目に入ってきたものに驚愕した。

 床に倒れているイーリス。

 その半身を兄が抱き起こしているのだ。

 すかさず間に割り込んで兄と取って変わろうとする。

 「お兄さま!何をなさって__。」

 「下がっていろ!これはままごとではい!」
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