獅子王とあやめ姫
派手な音を立てて、皿がばらばらになる。

 16年もたったからこそ、なのか。子供も大きくなった今だからこそ。 

 (イーリスを外に出すなんて絶対出来ない。…いやそれどころか、ここでぬくぬくと暮らしている訳にもいかないかもしれない…。)

 「お母さん、これも洗ってもらえる?」

 娘の声で、はっと我に返った。

 外の喧騒が再び耳に戻ってくる。 

 あ、ええ…と生返事をすると、皿の破片に気付いてイーリスは目を丸くした。

 「皿が割れてるじゃない!アイアスの言う通り、お母さんちょっと休んだほうが良いよ!ほらほら、横になってきて!」

 断ろうとすると、イーリスとテリに押し切られた。

 と、そこへ酒蔵の在庫を確認してきた雇われ人のホメオスが、ぶどう酒が残り少ないと報告してきた。

 「あらら...テリを送るついでに私、買ってくるよ。」
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