獅子王とあやめ姫
まだ男と言うには早いかもしれない。
彼の背は高く、イーリスの頭は彼の胸の辺りまでしかない。
しどけなく伸ばした金髪に橙色の瞳。おそらくクレータ人とパルテノ人の混血だった。
身なりから察するに少なくともイーリスよりは裕福な部類だ。
商人の格好をしているが、着崩すところはちゃっかり着崩すあたり、お気楽な次男坊か三男坊というところだろう。
彼の顔に先ほどのお客の面影を見出し、縁談のことを思い出した。
ふと、無言になるのも気まずいのでなんとなく言った。
「…今日、縁談を持ち込まれたんです。」
「へえ。それで酒を沢山持って家出したの?」
不器用な冗談にイーリスはふふ、と笑った。
「違いますよ。これは仕事。別に嫌ってわけじゃあなくて。私みたいな下町の娘にはもったいないくらい良い話ですし、むしろありがたいくらいなんです。」
「縁談持ち込まれた日に辻斬りに襲われるなんて、…そうだ名前!なんだっけ?」
彼の背は高く、イーリスの頭は彼の胸の辺りまでしかない。
しどけなく伸ばした金髪に橙色の瞳。おそらくクレータ人とパルテノ人の混血だった。
身なりから察するに少なくともイーリスよりは裕福な部類だ。
商人の格好をしているが、着崩すところはちゃっかり着崩すあたり、お気楽な次男坊か三男坊というところだろう。
彼の顔に先ほどのお客の面影を見出し、縁談のことを思い出した。
ふと、無言になるのも気まずいのでなんとなく言った。
「…今日、縁談を持ち込まれたんです。」
「へえ。それで酒を沢山持って家出したの?」
不器用な冗談にイーリスはふふ、と笑った。
「違いますよ。これは仕事。別に嫌ってわけじゃあなくて。私みたいな下町の娘にはもったいないくらい良い話ですし、むしろありがたいくらいなんです。」
「縁談持ち込まれた日に辻斬りに襲われるなんて、…そうだ名前!なんだっけ?」