獅子王とあやめ姫
商人が斬られた腕を押さえてうずくまっている。
押さえている指の隙間から流れる細くて赤い血の筋がしたたり、石畳を黒く濡らしていた。
こんなに多量の血を目の当たりにしたことのないイーリスには厳しい光景だった。
医者が手早く応急処置をするのを手伝いながら、イーリスは内心怯えきっていた。
あの時プローティスが助けてくれなかったら、この商人のように、いやもっと深く斬りつけられていたかもしれない。
「これでひとまずは大丈夫だ。…いや、無理して話さなくて結構ですよ。私が維持兵を呼びますから。イーリスもありがとうな。」
「本当に助かった。家へ取りあえず来てくれ…」
医者と商人のやりとりをぼんやりと眺めていると、イーリスは何かが建物と建物の間で不自然にひらめくものを視界の端にとらえた。
瞬時に目を凝らすと、紺色の外套(マント)だとは分かったが、すぐにその人物は今イーリス達がいる路地よりももっと細い路地に消えていった。
押さえている指の隙間から流れる細くて赤い血の筋がしたたり、石畳を黒く濡らしていた。
こんなに多量の血を目の当たりにしたことのないイーリスには厳しい光景だった。
医者が手早く応急処置をするのを手伝いながら、イーリスは内心怯えきっていた。
あの時プローティスが助けてくれなかったら、この商人のように、いやもっと深く斬りつけられていたかもしれない。
「これでひとまずは大丈夫だ。…いや、無理して話さなくて結構ですよ。私が維持兵を呼びますから。イーリスもありがとうな。」
「本当に助かった。家へ取りあえず来てくれ…」
医者と商人のやりとりをぼんやりと眺めていると、イーリスは何かが建物と建物の間で不自然にひらめくものを視界の端にとらえた。
瞬時に目を凝らすと、紺色の外套(マント)だとは分かったが、すぐにその人物は今イーリス達がいる路地よりももっと細い路地に消えていった。