獅子王とあやめ姫
「本当にご迷惑をお掛けします。私も探してきますから!」
返事を待たずにイーリスは駆け出した。
「あっ、おい待て!辻斬りはまだ捕まってないんだぞ!……ったく。おい、買わないなら野次馬は帰ってくれよ!」
呆れたように肩をすくめ、集まっている野次馬に怒鳴る店主。
彼はしばらくイーリスが消えた方を睨みながらぶつぶつとぼやいていたが、異国から雇った用心棒を信じることにしたのか、やがて店の奥へ引っ込んでいった。
* * *
騒ぎになっているバトラー商店の向かいの宝石店では、テリの恋人フィロスが客の接待に精を出していた。
「こちらの耳飾りはザフィエリをあしらっております。ザフィエリはクレータ国の原産で、この透明感のある青い光はクレータの女性に大変人気だそうですよ。」
なるべく物腰を柔らかくして話す。
だが客人は気に入らないようで、色の良い返事は返ってこなかった。
フィロスは違うものを出した。
「ではこちらは?リフィニといって、原産は我々パルテノ国。持ち主の幸せを願って、細かくパセス(春先に咲く花。赤・紫・白・橙など様々な色の背丈の割りに大きな花を咲かせる)の絵が彫られております。」
小さな赤い宝石が嵌め込まれた指輪。
客はお気に召したようだった。
ふと大きくなった外の喧騒が気になり、フィロスは客と同時に窓へ目を移した。
返事を待たずにイーリスは駆け出した。
「あっ、おい待て!辻斬りはまだ捕まってないんだぞ!……ったく。おい、買わないなら野次馬は帰ってくれよ!」
呆れたように肩をすくめ、集まっている野次馬に怒鳴る店主。
彼はしばらくイーリスが消えた方を睨みながらぶつぶつとぼやいていたが、異国から雇った用心棒を信じることにしたのか、やがて店の奥へ引っ込んでいった。
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騒ぎになっているバトラー商店の向かいの宝石店では、テリの恋人フィロスが客の接待に精を出していた。
「こちらの耳飾りはザフィエリをあしらっております。ザフィエリはクレータ国の原産で、この透明感のある青い光はクレータの女性に大変人気だそうですよ。」
なるべく物腰を柔らかくして話す。
だが客人は気に入らないようで、色の良い返事は返ってこなかった。
フィロスは違うものを出した。
「ではこちらは?リフィニといって、原産は我々パルテノ国。持ち主の幸せを願って、細かくパセス(春先に咲く花。赤・紫・白・橙など様々な色の背丈の割りに大きな花を咲かせる)の絵が彫られております。」
小さな赤い宝石が嵌め込まれた指輪。
客はお気に召したようだった。
ふと大きくなった外の喧騒が気になり、フィロスは客と同時に窓へ目を移した。