獅子王とあやめ姫
複数の黒々とした影が格子の向こうの壁にゆらゆらと写る。
(誰だろう…。)
「出ろ。」
イーリスを牢へ入れたのと同じ鎧をまとった二人の兵士だった。
無実が認められたのか、と淡い期待が一気に膨らんだが、手首を再び乱暴に後ろ手に縛られたことでそれは瞬時にしぼんでいった。
前を先導する一人に声を掛けてみる。
「あの、これからどこ__。」
「発言は許可されていない。」
イーリスの手を縛っている縄の端を持っているもう一人がぴしゃりと言った。
じめじめと湿った暗い階段を上がりきると、明かりとりの窓から夕陽の差す一階に着いた。
地下牢にいたのはほんの少しの間のはずなのに、差し込む橙色の光が随分懐かしく感じられた。
兵士が黒ずんだ扉の前で立ち止まる。
先程入ってきた扉ではない。
「失礼します。罪人を連れて参りました。」
「入れ。」
重々しく開かれた扉の向こうに広がる光景に、思わずイーリスは立ちすくんだ。
(誰だろう…。)
「出ろ。」
イーリスを牢へ入れたのと同じ鎧をまとった二人の兵士だった。
無実が認められたのか、と淡い期待が一気に膨らんだが、手首を再び乱暴に後ろ手に縛られたことでそれは瞬時にしぼんでいった。
前を先導する一人に声を掛けてみる。
「あの、これからどこ__。」
「発言は許可されていない。」
イーリスの手を縛っている縄の端を持っているもう一人がぴしゃりと言った。
じめじめと湿った暗い階段を上がりきると、明かりとりの窓から夕陽の差す一階に着いた。
地下牢にいたのはほんの少しの間のはずなのに、差し込む橙色の光が随分懐かしく感じられた。
兵士が黒ずんだ扉の前で立ち止まる。
先程入ってきた扉ではない。
「失礼します。罪人を連れて参りました。」
「入れ。」
重々しく開かれた扉の向こうに広がる光景に、思わずイーリスは立ちすくんだ。