獅子王とあやめ姫
 「なんだそれは。」

 夕陽に照らされ、ティグリスの琥珀色の目が訝りにきらめいた。


   *     *     *
 

 視界が吸い込まれるように暗くなり、意識が遠のいていく。

 これで楽になれる……と思った瞬間、冷たい衝撃が体中に走りイーリスは一気に引き戻された。

 また膝下が悲鳴を上げ始めた。

 今彼女は尖った鋭角の三角柱の石材を敷き詰めた板の上に正座させられ、膝には大きな重い長方形の石が乗せられている。

 この石の重みで石材が膝下に食い込み、罪人に激痛を与える拷問器具だということをイーリスは身をもって知った。 

 おまけにムチを顔に食らった時から右耳がおかしい。
< 74 / 176 >

この作品をシェア

pagetop