獅子王とあやめ姫
 「今の国政が引っくり返ってしまいますからね。王位継承権は現王よりもあの娘にあるのですから。」


    *    *   *


 イーリスは故郷の石畳をひとりぼっちで歩いていた。

 とても、心細い。

 故郷のはずなのに寒々しい。

 そしてどこか虚ろだった。

 少し離れた暗い建物の陰から誰かが出てきた。

 (誰だろう。)

 金髪に橙色の瞳。

 プローティスだ。
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