獅子王とあやめ姫
イーリスと同じ茶髪をまとめ、質素な服をまとった少女が顔を覗き込む。
(夢、か……。)
「ええ…。あの、大丈夫です。」
ぱたぱたと慌てて少女が出て行くと、イーリスは息を整え、周りを見回した。
自分の部屋の5倍はある部屋に、藍色の見事なビロードの絨毯、磨かれた金色の金具付きの上質な木の箪笥や机や椅子など、細部まで作り込まれた家具たちが品よく置かれていた。
窓の外はもう日が落ちて、遥か下の城下町に灯る灯りが見下ろせた。
イーリスが3人ほど楽に寝られそうな大きな寝具は、まるで雲の中にいるような寝心地である。
下町の娘の自分には身に余るほど贅沢な部屋だった。
おまけに血まみれになってしまったいつもの服は、いつのまにか細かい刺繍が施された白い着心地のよい寝巻きに変わっている。
そんな状況でそわそわと落ち着かず、きょろきょろと首だけ動かしていると、部屋の反対側にある鏡台に自分の顔が写った。
(ひどい顔…。これなら土人形の方がましだわ。)
殴られ、踏まれ、鞭で打たれ顔は見事に腫れ上がり、おまけに熱のせいで赤黒くさえ見えた。
特に目はまぶたがパンパンに腫れたおかげで切れ目のようになって、とても見られたものではない。
とんとん、と部屋の大きな両開きの扉が叩かれ、イーリスは上ずった声で返事をした。
(夢、か……。)
「ええ…。あの、大丈夫です。」
ぱたぱたと慌てて少女が出て行くと、イーリスは息を整え、周りを見回した。
自分の部屋の5倍はある部屋に、藍色の見事なビロードの絨毯、磨かれた金色の金具付きの上質な木の箪笥や机や椅子など、細部まで作り込まれた家具たちが品よく置かれていた。
窓の外はもう日が落ちて、遥か下の城下町に灯る灯りが見下ろせた。
イーリスが3人ほど楽に寝られそうな大きな寝具は、まるで雲の中にいるような寝心地である。
下町の娘の自分には身に余るほど贅沢な部屋だった。
おまけに血まみれになってしまったいつもの服は、いつのまにか細かい刺繍が施された白い着心地のよい寝巻きに変わっている。
そんな状況でそわそわと落ち着かず、きょろきょろと首だけ動かしていると、部屋の反対側にある鏡台に自分の顔が写った。
(ひどい顔…。これなら土人形の方がましだわ。)
殴られ、踏まれ、鞭で打たれ顔は見事に腫れ上がり、おまけに熱のせいで赤黒くさえ見えた。
特に目はまぶたがパンパンに腫れたおかげで切れ目のようになって、とても見られたものではない。
とんとん、と部屋の大きな両開きの扉が叩かれ、イーリスは上ずった声で返事をした。