獅子王とあやめ姫
 (あの人は私が目障りなんだろうな。汚い平民が大事な王子の時間を割いたんだもん。)

 さっさと消えろ煩わしい…とでも言いたげな、邪魔者を見る目。

 酔いつぶれたちょっと身分の高い客を介抱しようと起こした時にあんな目をされたことがある。

 「どうか、なさいましたか?」

 「あ、いいえ…なんでも。」

 「あら、左様でございますか。」

 そうは言いながらも、視線の先に気付いたパピアは声をひそめて言った。

 「フィストス様はいつもああなんですよ。この間も廊下で同僚と話してたら、すっごい恨めしげに睨まれたんです~。」

 秘密を打ち明けるようなその言い方に、思わず顔の筋肉が緩まった。

 ずっとぶっきらぼうだったイーリスのその表情を見て安心したのか、パピアはまた口を開いて続ける。

 「注意するなら言えば良いと思いません!?あの人の目、本当に怖いですよね~!その癖フィストス様、第一王子には頭が上がらないんです。」
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