ごめん、帰らなきゃ。(完)
「水無月...」
あたしは、おそらく届かないだろう好きな人の名前を小さく呼ぶ。
「......なに?」
「え?」
ふと、後ろから声がした。
あたしが、あいつの声を間違えるわけがない。
「水無月...。」
「別れたのかよ。」
「え? うん。」
「俺、なんなんだよ。好きな人が勇気出して別れ切り出して、それがめっちゃ嬉しいんだよ。
あーもうやだ。自分が嫌だ。別れたら俺のもんにしちゃいそうだし。
好きだよ紅月。めっちゃ好き。」
抱きしめられてそう言われた。
あーもう。あたしも好きだよ。
あたしの耳に感じるのは、とても熱くて柔らかい水無月の頬。
そんなに、あたしのことが大切なの?
ふつーに嬉しいんだけど。
「ありがとう水無月。」
あたしも、気づいたら抱きしめ返してた。