ごめん、帰らなきゃ。(完)



「水無月...」

あたしは、おそらく届かないだろう好きな人の名前を小さく呼ぶ。


「......なに?」

「え?」



ふと、後ろから声がした。

あたしが、あいつの声を間違えるわけがない。


「水無月...。」

「別れたのかよ。」

「え? うん。」

「俺、なんなんだよ。好きな人が勇気出して別れ切り出して、それがめっちゃ嬉しいんだよ。
あーもうやだ。自分が嫌だ。別れたら俺のもんにしちゃいそうだし。
好きだよ紅月。めっちゃ好き。」

抱きしめられてそう言われた。

あーもう。あたしも好きだよ。

あたしの耳に感じるのは、とても熱くて柔らかい水無月の頬。

そんなに、あたしのことが大切なの?

ふつーに嬉しいんだけど。

「ありがとう水無月。」

あたしも、気づいたら抱きしめ返してた。


< 17 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop