ごめん、帰らなきゃ。(完)
「なにちゃっかり抱きしめちゃってんの、早く離せ...」
「なあ、抱きしめてるのにさ、俺の気持ちが分かんない?」
「分かんないし。」
そりゃあ、抱きしめられたぐらいで相手の気持ちが分かるなら、世の中のみんな苦労しませんよ。それあれですか水無月さん。もしかして、あたしがテレパシーとか持っているとでも思ってんですか。
「あの、あたし何も持ってないけど?」
「はぁ!? 何の話?」
「あー、チャイム鳴ってるー。じゃーね水無月。」
「ちょっと待って紅月。チャイムなんて鳴ってないけど?」
チッ...バレたか。
「とりあえず離そうか? こんなに意味わからん抱きしめされるとさ、暑苦しいんだけど。」
あたしは、水無月の溝をパンチして離す。
「いってぇ! 何すんだよ紅月!!」
「そっちこそ、何してるんだよ水無月。あーチャイム鳴ってるー。ばいばーい。」
そう言って後ろを向いて歩き出すと、腕を掴まれて止められた。