ごめん、帰らなきゃ。(完)
「彼氏さん、なんだって?」
咲希が、リップを塗りながら言う。
「なんか、言い合い聞こえてたけど大丈夫? みたいな...。心配してくれたんだよ!!
あー、先輩かっこいー!! それに優しいし!! もろあたしのタイプ!!」
「へー。良かったじゃん。」
「なぁ、紅月...。」
「ん? なに。」
「さ、さっきはごめん。俺も、言い過ぎた。あんまり気にすんなよ。」
「...は? まさかそれが、やさしさのつもり?」
「.........」
水無月は何も言わない。まさかの図星ですか。
「悪かったな...。どーせ俺は、優しくなんてないし。」
「わかってるじゃん水無月。」
あたしは、水無月に嫌味な笑みをこぼす。
「お前って、遠慮って言葉と失礼って言葉知ってる?」
「今さらあんたに遠慮もクソもあるか。」
「ほー。言ってくれんじゃん、紅月ちゃん。」
遊びでも、こいつにちゃん付けで呼ばれるのは、無償に腹が立つ。