君の隣





私は、幕府が動き出していることを、高杉に、報告した。



なつ「ねぇ。高杉。幕府が、どうやら、うちの藩が、水面下で動いてるのを気付きだして、朝廷に、征伐の許可を取ろうとしている。」





高杉「なるほどな・・・。」




なつ「しかも、家茂公が上洛してるみたい。」




高杉「うーん・・・。」




高杉は腕組みをし、何かを考える。




高杉「時間の問題かもしれんな。」









その予見は当たり、幕府は、11月7日に進軍令を出した。





高杉や桂さんを始め12人の出頭を命じられた。






藩は、高杉に“谷 潜蔵”(たに せんぞう)と名を改名させて、幕府には、行方知れずとシラを切った。




高杉の家は、新しく、養子を迎えて、高杉は、嫡男としての権利を失った。




谷家の当主となった。









しばらくして、幕府は、問罪使の永井らの一行が、広島に来た。




長州の非を詰問し、長州征伐の大義名分を得るためだ。





長州からは、宍戸さん(山県さんが改名した。)が応援に行った。





薩摩藩は、出兵を拒否。




そして、薩摩藩は、黒田 了介殿という藩士を長州に送り込んできた。








なつ「ねぇ・・・。高す・・・じゃなくて、谷。どうするの?桂さん・・・じゃなくて、木戸さん、嫌がってる。」




桂さんも高杉と同じく、名を改名したのだ。




以前、薩摩の西郷殿と会うと約束して、すっぽかされ、恥をかかされた桂さんは、今後の対策のため薩摩の上の者と会談に行くのを渋っていた。





なつ「もう、谷が行ったら?」




高杉「俺は、こういうのは向かない。」




なつ「私も、そう思う。くくっ。谷は他藩との交渉下手だからねぇ。谷が行ったら、喧嘩になっちゃうね。」




高杉がパチンと私の頭を叩く。





なつ「痛い!本当の事でしょうが。」




と睨むと、頬をつねろうとされて、慌てて逃げた。





高杉は、井上さんと手を組み、藩から命を出させた。





そして、木戸さんが渋々、上京した。





さすが、高杉と言うべきか、高杉は、薩摩藩と手を組むというのを許せない反対派のため、奇兵隊からも、三好さんを行かせた。





なつ「あーあ。私も行きたかった。」




高杉「お前は、オレの側にいろ。」




最近というか、私が、高杉の妾になってから、高杉は、少しでも危ない所には、私を行かせないようにしていた。





そして、常に側に、置きたがった。




なつ「こんなに、独占欲の強い人だったかなぁ。」




まぁ、私が一回、出て行くと、なかなか帰ってこない事をよく知ってるからだとは思うが、やはり、情報屋、そして、隠密隊としては、血が騒ぐ。










桂さんもとい、木戸さんが上京した夜中、こっそり、家を出た。




馬を取りに行くと・・・。




「何やってんだ?こんな夜更けに。」



ギクッと、体が震えた。





恐る恐る振り返ると、高杉がこめかみに青筋を立てて立っていた。





なつ「えーっと・・・。これは・・・。馬の様子を・・・。」





高杉「へぇ?馬の様子なぁ・・・。こ・ん・な・夜更けに見に来るとはなぁ?しかも灯りもなくてよく見れるものだ。」





ぐぃっと腕を掴まれて、引き寄せられる。




高杉「そんなに、俺と離れたいのか?」




と、少し、寂しそうなそして甘い声で耳元に囁かれた。




なつ「ち・・・違うよ?私が行きたいのは、情報屋として、血が騒ぐというか・・・って・・・しまった!」




相手が高杉で、しかも、最近、想いが通じ合ってから、私は、高杉に嘘すらつけないでいる。




高杉「やはり、そうか。なぁ・・・。なつ・・・。俺から離れてくれるな。俺の愛妾なんだろ?」




高杉は少し、不安そうに私の顔を覗く。




なつ「わかった・・・。ごめん。側にいる。」




高杉は、ギュッと私を抱きしめて、口付けをする。





高杉「ちゃんと、後で、報告を聞けばいい。」




私は、高杉に手を引かれて、部屋に戻った。





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