君の隣
慶応元年9月。
遂に、朝廷が、長州征伐をお許しになられた。
私達、長州藩は、武士はもちろんの事、商家や農民までが、打倒幕府に燃えていた。
宍戸さん(山県さん)が書いた『長防臣民合議書』と題した冊子がほぼ、全市民に配られた。
仮名を振り、誰でも読めて理解が出来るよう、易しく、そして、赤穂浪士の討ち入り等も例に取られていた。
長州藩全市民にこの書と洋式の銃も配られた。
なつ「皆、凄くやる気に満ちてる・・・。」
高杉「あぁ・・・。ただ、長州人は、熱しやすく冷めやすい・・・。」
なつ「谷って、そういう見方が出来るから凄いよね。」
高杉「何だ?お前が誉めるなんて、明日は、嵐・・・いや、槍が降るんじゃないか?くくくっ。」
なつ「もうっ!せっかく、感心してたのにっ!」
高杉は、長州藩の民を客観的に見ることが出来る。
そこは、本当に、尊敬に値する。
しばらくして、薩摩藩がエゲレスから武器を買うという情報を得て、高杉が行くという。
でも、私は、知っていた。
高杉の奥方が家族を連れ下関に引っ越してきた事を・・・。
なつ「谷の奴・・・。居心地が悪くて、逃げる気ね・・・。」
本当に、子供だ。
木戸さんに、弱音を吐く文を出している。
なつ「しかも、また、私のこと、愚妾って・・・。ふふふっ。」
驚かしてやる!情報屋のおなつを騙せると思ったら大間違い。
私は、一人、黒い笑みを浮かべた。
谷は、長崎に発った。
私は、同じ船に乗り込み、高杉を監視した。
そんな事は、つゆ知らずの高杉は、伊藤さんと、話をしていた。
伊藤「谷さん。大変だったですね。奥方と妾さんとの間で・・・。」
高杉「あぁ。あれには、参った。何とか、逃げた。」
はぁん。そういうこと。
やっぱり、逃げたということね・・・。
高杉・・・。私を甘く見過ぎね・・・。
長崎へ着くまで、私は、変装をして、客のフリをした。