君の隣
長崎に着いた。
高杉等は薩摩に入ろうとしたが、まだまだ、薩摩にも、長州藩の事を良く思っていない者がいるとのことで、薩摩入りは断念した。
その夜・・・。
なつ「やっぱりね・・・。」
花街に、高杉は現れた。
若い芸妓を隣にはべらせ、楽しそうだ。
私は、変装して、芸妓として、お座敷に上がった。
なつ「失礼します。」
三味線を弾く。
ポロン。ポロロン。
高杉「ぷっ。くくくっ。お前、下手くそだな。三味線が下手な芸妓を、俺は、一人知って・・・うぐっ。」
高杉が、私を見て固まっている。
高杉「お前・・・っ。」
なつ「谷様?三味線が下手で悪ぅございましたなぁ。」
ギロリと睨む。
高杉「う゛っ・・・。」
なつ「私のこと、情報屋として、動くのを反対するのに、自分は、奥方と愚・妾の間に居づらいから、エゲレスへ行くんですか?えぇですねぇ?前に、一緒に行こうと言ってくれたのに、あれは、嘘だったんですね!」
私がプィっと顔を背けると、高杉は、他の芸妓を全て、部屋から出した。
なつ「もう、私は、行きますので、どうぞ、ごゆっくり。谷様?お元気で。」
ニッコリ笑って立ち上がろうとすると、高杉は、私を抱きしめた。
高杉「すまぬ。なつ・・・。あの空気がな・・あの空気が、耐えれなかった。」
なつ「だからって、逃げるなんて!」
高杉「なつ・・・。すまぬ。」
抱き寄せられて口付けされる。
なつ「谷・・・。私は、谷の事、政でも支えたいの。だから・・・。」
こんな事しないで・・・。そう言おうとしたら、唇を塞がれる。
私は、高杉の着物をギュッと握った。
高杉「一緒に、エゲレスへ行こう・・・。約束だ。」
なつ「約束・・・?」
高杉「あぁ。約束だ。だから、へそを曲げるな。」
なつ「もし破ったら、私・・・勝手に動くからね?」
高杉「あぁ!悪かった。今度から、ちゃんと連れて行く。」
それから、高杉は、奥方に贈り物をし、私達は、宿へ行く。
なつ「谷・・・。私、少し出てくる。」
高杉「どこへ行く?」
なつ「調べもの。」
高杉は、何を調べるのか聞きたそうにしていたが、聞き出せないでいた。
それが、可愛く思える。
私は、答えた。
なつ「あのね。幕府が動くかもしれない・・・。というか、広島での幕府との会談の雲行きが怪しい・・・。エゲレスは・・・。」
高杉「今回も無理そうだな・・・。」
私は、黙って頷く。
高杉は、はぁ・・・。と一つ溜め息を零した。
私は、幕府の動向を調べていると、軍艦が売りに出されていた。
私は、高杉に、報告をした。
すると・・・。
高杉「その船、買うぞ!」
なつ「ええぇ!?36250両だよっ!?」
高杉「値の問題ではない!その船があれば、戦に勝てる!逆に、ないと、戦に勝てない。」
そして、高杉は、独断で、軍艦を購入してしまった。
この船には、高杉が上海で見た、底込ライフル大砲を積んだ船だったらしい。
4月29日。
船に乗り込み、下関に戻った。
帰って、藩の方々は、非難した。
しかし、木戸様や井上さんの計らいもあり、購入する事が決まった。