君の隣
10月になり、下関の桜山に小屋が完成した。
私達は、そこに移り住む。
高杉「ここを、“東行庵”と名付ける。」
なつ「そっか。」
この桜山には、先に逝った同志達の招魂場がある。
高杉「ここで墓前の落ち葉でも掃きながら、静かに、お前と過ごす。」
なつ「谷・・・。」
私達は、口づけを交わす。
谷は、自分の残された時間を悟ってる。
私は、ギュッと谷を抱きしめた。
すると、フッと谷が笑う声が頭の上でした。
なつ「何がおかしいの?」
高杉「お前とこうやって抱き合ってることが、嬉しいのかもな・・・。」
なつ「なっ・・・。」
高杉が、素直だ・・・。
私は、真っ赤になる。
すると、
高杉「くくくっ。お前とは、口を開けば喧嘩ばかりだったからな。なつ・・・。お前のこと、ずっと、愛おしく思っていた。やっと、想いが通じたのに・・・。お前がいない所に逝くのは寂しいものだ。しかし・・・。やっと、俺も、先に逝った同志に顔向けできる。先生にも、報告出来る。なつ・・・。後は頼んだ。俺達の志を・・・。」
私は、涙が溢れて、谷をギュッと抱きしめ、コクコクと頷いた。
なつ「私も、谷を愛してた。前から・・・。これからもずっと・・・っ。私も、谷と離れるの嫌だ・・・っ。」
私は、谷に尼になりたいと思っていた自分の気持ちを見透かされた。だから、谷は、私に、志を継げと言ったんだ・・・。
なつ「谷・・・。谷が出来なかったことは、私が継ぐ。木戸さんの事を手伝う!」
そう言うと、安心したかのように、ギュッと抱きしめられた。