君の隣




しばらく経った頃・・・。




私は、先生の事を想うと胸が苦しくなった。




なつ「ダメだ・・・。先生を想いすぎて、集中が出来ない・・・。」



何をしてても、先生の事ばかり考えてしまう。



私は、想いを告げる事を決める。



先生からはおなごとしては全く見られていないのはわかってる。



私というか、先生は、女には興味がない。



私は、おなごの格好をした。



髪の毛も綺麗に結って、簪を差して、化粧もした。




なつ「おはようございます。」



全員「っ・・・。」



すると、先生が褒めてくれた。




松陰「おなつ。綺麗だね。見違えたよ!」



なつ「えへへ。ありがとうございます。先生、お話をしたいことがあります。」



松陰「何?」



なつ「ここでは、ちょっと・・・。」



松陰「わかった。場所を移ろう。」




私達は、庭の端に来た。



まずは、最近、手に入れた、情報を先生に報告する。



最近、藩の中で、藩の金を使い込んでいるという情報を手に入れていた。



なつ「私、深い関係のある者に近付こうと思います。」



松陰「気をつけるんだよ。」



気遣ってくれる先生にも、心がときめく。




なつ「あの!先生!先生は、おなごには興味ないのでしょうか?嫁御とか娶らないのですか?」


松陰「はははっ。こんな、罪人の所に、来てくれる人なんていないよ。」



なつ「私は、そんなの関係ありません!」


松陰「ありがとう。でも、今は、嫁御より、討論している方が楽しい。私は、養ってあげれないからお嫁さんが可哀想だよ。」



なつ「そんな事ありません!先生はいてくれるだけで・・・。」


松陰「そういえば、おなつはどうなの?嫁に行かないの?」



なつ「私ですか?私は・・・っ。」



先生のお嫁さんになりたい。



そう言おうと思ったら・・・。



松陰「高杉君と合うと思うんだけどな・・・。」



なつ「高杉!?絶対ナイです!」



松陰「そうかなぁ・・・。お似合いだと思うけど。あ!でも、あそこは大組だから、もう、相手は決まってるかな・・・。気を落としちゃダメだよ。」


え?先生、勘違いしてる?



松陰「吉田君なんてどうかな?」



なつ「え・・・。栄太郎さん・・・?」



松陰「そうそう。あ!案外、似合うかも!二人、仲が良いし。良いんじゃないかな?探してるんだけど、私の目に留まる人が、今のところ、高杉君か吉田君なんだ。」



それを、聞いた瞬間、私の失恋が決まった。



先生は、私を妹のように大事に思って、相手を探してくれていた。




それは、つまり、先生は私のことを、おなごとして見てくれていない事を意味していた・・・。




なつ「先生のバカッ!私は・・・。私は・・・っ。先生と夫婦になりたかったんですっ!」



松陰「え・・・。」


先生は、固まっている。



なつ「おなごからこんな事を言うなんて、はしたないですが・・・。私は・・・っ。」


松陰「ごめんね。おなつは大事な人だと思う。でも、罪人の嫁になんて事は考えちゃダメだよ。」


これは、フラれてる。



私は、無理やり笑った。



なつ「いきなり、すみませんでした。次、戻ったら、普通になってます。だから、少し、講義には遅れます・・・っ。」



私は、そこから、飛び出した。




涙が溢れて溢れて止まらない。




私は、トボトボ歩きながら泣く。



すると・・・。


後ろから、足音が聞こえた。



振り返ると、


なつ「あ・・・。栄太郎さん・・・。私、振られちゃいました。」



栄太郎「そうか・・・。」



栄太郎さんは、私の気持ちを知っていて応援してくれていた。



私達は、少し歩く。



すると、


なつ「うわっ。」



鼻緒が切れて、栄太郎さんの胸に抱き留められた。



なつ「すいません!」



すぐ、離れようとすると・・・。



なつ「痛っ!」



簪が、栄太郎さんの着物に、刺さり、曲がってしまったようで、私の髪の毛と絡まっている。



栄太郎「ちょっと待って・・・。」



栄太郎さんの胸に顔をくっつける。


変な体勢で足が震える。



それに気がついた栄太郎さんが、


栄太郎「嫌でなければ、抱きついておいていいよ。その方が楽だよ?」



なつ「すみません・・・。」


私は背中に腕を回す。



しばらく、そのままの体勢で待つ。



すると・・・。



栄太郎「取れたよ。」



なつ「ありがとうございます。すみませんでした。」



栄太郎「いいよ。」



そして離れると、栄太郎さんの着物が破れてしまっていた。



なつ「あ・・・。栄太郎さん、着物が破れてしまいましたね。ごめんなさい。後で縫います。」



栄太郎「あぁ。悪い。頼む。・・・落ち着いたか?」



色々と起こったせいで、涙はいつの間にかに止まっていた。





そして、塾に戻る。



なつ「松陰先生!先ほどはすみませんでした!もう、大丈夫です。先生に、ご迷惑もおかけしません!先生、弟子としてここにいても良いですか?」



すると、先生は、優しい顔で、「もちろんだよ。」と言って、頭をポンポンと撫でてくれた。




そして、皆がいるところに行く。



そこで、私は、文さんに、裁縫道具を借りた。



なつ「栄太郎さん、着物を貸して下さい。」



栄太郎「あぁ。」



着物を預かり、縫っていると、



久坂「お前、栄太郎の嫁かよ。」


と、笑いながら言われた。



九一「本当だ!もう、くっついちゃえば良いのに。」



なつ「何を・・・。」



高杉「うるさい!お前も、ニヤニヤしながらこんな所でそんな事をするなっ!」



なつ「なっ!ニヤニヤなんてしてないっ!」



高杉は、機嫌が悪いらしく、イライラして出て行った。



なつ「高杉どうしたんですか?」




久坂「ぷっ。やきもちだろ?」




なつ「やきもち?何で、やきもち?」



久坂「はははっ。まぁ、俺からは、何とも・・・。くくくっ。」



すると、また、高杉がバタバタっと来て、


高杉「余計な事を言うなっ!誰が、こんな男女にやきもちなんぞ妬くかっ!」



と、言って、出て行った。



何だったの?


変な奴・・・。



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