君の隣
はぁ・・・。
飲み過ぎた・・・。
外を出ると、雨が、ザアザア降っている。
傘は高い高級品だ。買えないし持ってない。
こんな夜中に、笠を売ってる所も無い。
なつ「まぁ、いっか。」
私は、酔いを覚ます事もあり、雨に濡れて歩く。
しばらく歩くと・・・。
「おい!命が欲しけりゃ、身ぐるみ脱いで置いて行け!」
と、声をかけられた。
不逞浪士か・・・。
私は、背中に背負っていた刀を抜く。
最近、栄太郎さんや桂さんそして、嫌がらせのように、高杉まで、私に稽古を付けてくれている。この3人に剣術を教えてもらい強くなった。
それまでは、脅しにしか使っていなかった物が武器になる。
ちょっと、酔いが回って、フラフラするが、大丈夫・・・。
なつ「身ぐるみ脱いで置いて行くのはあんたらの方だ。」
「何をぉぉ!やっちまえ!!」
カキィン!
ザシュ!シュパッ!
一人が血飛沫(ちしぶき)を上げ、目の前で崩れた。
それを、合図に、他の奴らも襲いかかってきた。
私はヒョイと避けて、太刀を振る。
しばらくすると、私の足元には、男の遺体が数体転がっていた。
人を斬る感覚はこういう感じか・・・。
私は、初めて人を斬ったが、酔っていたためか何とも思わない。
なつ「血なまぐさい・・・。」
少しの間、上を向き、顔を雨で洗った。
そして、また、帰り道を歩く。
なつ「これじゃ、先生のとこ行けないか・・・。心配をかけてしまう・・・。」
トボトボ、歩いていると、また、傘を差した男が立っている。
なつ「また、不逞浪士か?」
少し警戒をして、近寄ると、見知った顔だった。
なつ「高杉?」
高杉は、私を見て驚く。
高杉「お前・・・。それ・・・。大丈夫か!?濡れて、ビチャビチャじゃ・・って、お前、怪我してるのか?血の臭いが・・・。」
なつ「んー?大丈夫!全て、返り血だから。」
高杉「返り血って・・・。」
なつ「さっき、不逞浪士に襲われて・・・。斬ったの。」
高杉「お前・・・。人を斬った事あるのか?」
なつ「ううん。これが、初めて。」
私が、普通に話しているのを見て、酔っていると判断したようで、高杉は、私の手を引いた。
なつ「何?」
高杉「ついて来い!」
なつ「はーい。」
別に、この時は何も思わなかった。人を斬ったのも、高杉について行ったのも・・・。
高杉は、私を、どこかの家に入れた。
なつ「ここは?」
高杉「ここは、俺の家の納屋だ。」
なつ「納屋でこの広さって、やっぱり、お坊ちゃんだなぁ。高杉は!」
そう言うと、「うるさい」と怒られた。
そして、大きな桶に、湯を持ってきてくれた。
私は、とりあえず汚れた、顔や手を洗う。
お湯が赤くなった・・・。
すると、また、高杉はお湯を持ってくる。
高杉「着物を脱げ。」
なつ「はぁ?ヤダ!」
高杉「そんなボトボトでいたら風邪引くだろ!」
そして、高杉は私の着物を剥ぎ取った。
なつ「ちょっと!」
そして、手拭いを浸して絞ると渡してきた。
なつ「あ・・・。ありがとう。」
私が体を拭いていると、高杉はどこかへ出て行き、戻ってきた。
高杉「それ着とけ。」
肩に掛けられた着物は上質で高物だとすぐわかる。
しかも・・・。
なつ「高杉の匂い・・・。」
クンクンしていると、ゴシゴシと手拭いで頭を拭かれた。
高杉「あれから・・・。どうしたんだ?」
あれから?あれからってなんだっけ?
私が、疑問に思っていたのを気づいたみたいで、高杉は、
高杉「上田とどうなったって聞いてる!」
あぁ。そういえば、高杉は、心配してくれていたっけ。
なつ「お酒をたらふく飲ませた。まぁ、結構、自分も飲んじゃったけど。はははっ。」
そう言うと、高杉は、水の入った湯呑みをくれた。
それを一気に飲み干した。
なつ「はぁー!ありがとう。」
高杉「この酔っぱらいめ!」
すると、高杉は私を抱きしめた。
耳に唇を付けられて、口付けされた。
なつ「え?」
軽く胸を押して、高杉を見つめると、顔が、近寄ってきて、ギュッと目を瞑ると、接吻された。
高杉は私のうなじの辺りに指を滑らす。
ゾクッとして、顔を離そうとするが、それを高杉は許してくれない。
何度も角度を変えて唇を重ねる。
唇を舌で舐められて、少し口を開くと、高杉の舌が、滑り込み自分のと絡まる。
私は、何故、抵抗しないのかな?
少し前、松陰先生に失恋したばかりなのに・・・。
しかも、恋仲でもない高杉なんかと・・・。
いつの間にか、着物は乱されて、色んな所に、口付けをされている。
『まぐわうくらいいいだろう。』
以前、高杉はこんな事を言ってたっけ?
きっと、お酒のせい・・・。
きっと、この雨のせい・・・。
きっと・・・。
フッと見上げると高杉は、切なそうな顔をして私を見つめている。
なつ「どうし・・・。」
そう聞こうとするも、唇を塞がれる。
高杉「なつ・・・。なつ・・・。」
高杉は、ずっと、私の名前を囁いていた。
そして、私達は、一つになった。
高杉は、私に着物を着させると、抱きしめてきた。
何度も、口付けをして、抱きしめられる。
今日は、二人ともおかしいんだ。
だって、私も、この腕に抱きしめられるのが嫌じゃない。
口付けだって,もっと触れたいと思う。
そして、私達は、何度も、お互いを求め合った。