君の隣



そして、私は、先生の所へは行かず、城へ向かった。



上田が言っていた、打ち出の小槌を探す。



きっと、二重帳簿になってるはずだ。




私の大仕事・・・。



ここで不正を暴いて、松下村塾の塾生がしたと、いうことになれば、評判が上がる。



ただし、失敗は、許されない。


だって、許可なく忍び込んでいる。





私は、書簡庫を調べる。




上田は確か・・・。



色々な項目。使われていない。この2つ。



土木・・・。学業・・・。着物?城の修繕・・・。



占い?何これ?




パラパラッと書簡を捲る。



陰陽師に毎年、結構な額が、支払われてる。




あと、遊学費・・・。毎月、こんなにいるのだろうか?



私は、各地の忍びの仲間に書状を送る。




7日後・・・。



各地の長州藩邸に密偵に入ってもらい、藩からの給金を調べた。



やっぱり。



遊学費を多めに水増ししていた。




なつ「ということは・・・。コッチの占い費も・・・。」




この占い師・・・。京の人間か・・・。




私は兄上の勝太郎に書状を書いていた。




そして、京にいる陰陽師の名簿とそんな陰陽師はいないとの返事だった。



ということは、この陰陽師に支払っている金は全て上田に流れてるということ。


私は、政をしている天井裏へ忍び込む。



大組の方々、そして上田。




藩主、敬親様もいる!



私は、天井裏から飛び降りた。



家臣「曲者っ!」



なつ「敬親様!ご無礼をお許し下さいっ!私は、吉田 松陰先生の弟子で松下村塾の塾生、なつと申します。私は、敬親様にお伝えしたい義があります!」



大組の一人「お前、場をわきまえろ!」



なつ「藩の金で私腹を肥やし贅沢三昧をしている大組がいるのはご存知ですか!?これが、証拠の品です!」



私は、各地から集めた書簡を出す。



私は、捕らえられて、畳の上に押さえつけられている。



家臣「黙れっ!」


大組の一人「やはり、罪人の開いている塾に通う者は、罪を犯すのかもしれませんねぇ。そういえば、高杉殿のご子息も確か・・・。」



くくくっ。と、バカにしたような視線を、皆、高杉の父に向ける。




なつ「何も知らないくせに、高杉・・晋作様をバカにするなっ!」



高杉父「貴方のような者に、息子を庇って欲しくない!」



なつ「っ!」


確かにそうだ。



すると、それまで一切黙っていた敬親様が、書簡を手に私を見た。



敬親「皆の者、少し黙りなさい。おなつの義を聞こう。」



私は、離されて、座り直す。




そして、二重帳簿の事を話す。



すると調べてくれるとおっしゃって下さった。


そして、もう一つお願いをした。



なつ「色んな者が、色んな場所で学びたいと思っています。どうか、希望する者には、遊学の許可を!」


そして、約束もしてくれた。





私は、久しぶりに塾に帰る。




なつ「松陰先生っ!お久しぶりです!」


松陰「おなつ!!さすがに皆、心配したぞ!」



なつ「申し訳ありません!」


そして、今までの事を話した。



久坂「もし、上手く行けば、塾の名が上がる!」



稔麿「遊学まで・・・。」





そして、三日後・・・。



藩の遣いの方が来られた。




私は、敬親様とお目通りが叶った。




敬親「よく調べてくれた。もっと深く調べると関わっている者も多かったようだ。」



なつ「藩のお役に立てて幸せにございます。」



敬親「そこで・・・。おなつよ。お前に、頼みたいことがある。隠密隊に入って欲しい。」



なつ「隠密隊でございますか?」


敬親「あぁ。ここは、藩の中でも限られた人間しか知らない。おなつが今回、した事や・・・。」


なつ「暗殺等も含まれる。ということですか?」



敬親「あぁ。察しが良いな。」



なつ「私は、松下村塾の塾生として、扱っていただけますか?あそこにはまだまだ、優秀な人達がいます。」



敬親「もちろん、優秀な人材は宝だ。」



そして、私は、部屋を出て、戻った。











しばらくして、塾に稔麿さんや久坂さん松浦さんらが志願していた上方や江戸の遊学を許された。



なつ「頑張って下さい!」


すると、稔麿さんに抱きしめられた。


稔麿「ありがとう・・・。ありがとう!おなつ!」





私も嬉しくて、ギュッと抱きしめ返す。



すると、ペチッと頭を叩かれる。


なつ「痛っ!って、高杉か・・・。何?」


高杉「何?じゃない!お前は、何をしている!」



なつ「何をって・・・。稔麿さんの江戸行きを喜んでいただけだけど?何か?」



稔麿「あーもーっ!高杉さん!すいませんって!」



なつ「何で、稔麿さんが高杉に謝るの?別に怒られるようなことしてないのに・・・。」



高杉「お前っ!この尻軽男女っ!」



なつ「意味わかんない!侮辱して!」



最近、本当に、高杉の奴、何なの?



あれじゃあまるで、私の男みたいな言い方じゃない!



え・・・?まさか、恋仲とか、思ってる?




ないないないない!



首をブンブン横に振った。




高杉「何やってんだよ?」



なつ「まだ、いたの?」


高杉「お前っ!本当に、無礼な奴だな!来い!」



なつ「ちょっ。ちょっと!」



私は、腕を掴まれて、引きずられる。





そして、川辺の近くまで来た。



なつ「何?」


顔を覗かれて、頬を撫でられる。



すると、腕を肩に回されて、ぐいっと、抱き寄せられた。



なつ「え・・・。」



高杉「なぁ・・・。俺のこと好きって言え・・・。」



なつ「どうしたの?いきなり・・・っ。」



接吻された・・・。



ゆっくりと唇を離されて、ギュッと抱きしめられた。




高杉「なつ・・・。」



なつ「どうしたの?何かあったの?」



高杉「他の男に触らせるな・・・。」



なつ「へ?嫉妬?やきもち?」



高杉「バカっ!違うわっ!自惚れんなっ!」



なつ「あ!高杉!講義!討論始まってるよっ!行こう!」








安政5年に入り、皆が次々と萩を出て行く。





何かが大きく動く。



そんな予感だ・・・。




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