君の隣
なつは、どうやら上役の不正を暴いたらしい。
高杉父「晋作・・・。お前、なつとかいう女と知り合いか?」
高杉「塾の学友です。」
高杉父「あんな奴らと関わるな。」
高杉「しかし、なつは、藩で行われていた不正を暴いたのです。今回だって、隠密隊に命じられたと・・・。」
高杉父「隠密隊だと?」
高杉「はい・・・。」
高杉父「あそこがどういう所か知っているのか?あそこは、何でもする所だぞ。仲間を調べたり、暗殺したり・・・。優秀な者が多いが、人の心のない人間が多い。おなごであんな所に入るということは、それなりのおなご。お前には相応しくない。」
高杉「なつは、そんなおなごではありません。心も優しいし、仲間を想える娘です。」
高杉父「まさか・・・。お前・・・。そのおなごと恋仲とかにはなっておらぬだろうな!?もし、変な関係なら、すぐに別れなさい!わかったな!」
高杉「ちょっと、待って下さい!父上!」
父上は、俺の意見なんぞ聞いてくれず、部屋を出て行った。
高杉「くそっ!」
バシッ。
柱を殴る。
しばらくして、塾に稔麿や久坂、松浦さんらが志願していた上方や江戸の遊学を許された。
なつ「頑張って下さい!」
すると、稔麿がなつに抱きついた。
稔麿「ありがとう・・・。ありがとう!おなつ!」
なつも、ギュッと抱きしめ返している。
それを見ていると、ムカムカして、ペチッと頭を叩いた。
なつ「痛っ!って、高杉か・・・。何?」
高杉「何?じゃない!お前は、何をしている!」
なつ「何をって・・・。稔麿さんの江戸行きを喜んでいただけだけど?何か?」
稔麿「あーもーっ!高杉さん!すいませんって!」
なつ「何で、稔麿さんが高杉に謝るの?別に怒られるようなことしてないのに・・・。」
高杉「お前っ!この尻軽男女っ!」
なつ「意味わかんない!侮辱して!」
コイツは、俺を何だと思ってるんだ!?
身体を重ねたのに・・・って、酔った勢いとか思ってるのか?
アイツの気持ちも、考えもわからん。
なつを見ていると、首をブンブン横に振っている。
高杉「何やってんだよ?」
なつ「まだ、いたの?」
高杉「お前っ!本当に、無礼な奴だな!来い!」
なつ「ちょっ。ちょっと!」
コイツと話すといつも喧嘩になる。俺は、なつの腕をひいた。
そして、川辺の近くまで来た。
なつ「何?」
顔を覗いて、頬を撫でてみる。
確実な繋がりが欲しい。今の俺達はどういう関係だ?
俺は、なつを抱き寄せる。
なつ「え・・・。」
高杉「なぁ・・・。俺のこと好きって言え・・・。」
なつ「どうしたの?いきなり・・・っ。」
なつが欲しい。なつを俺の女だと言いたい。
唇を合わせた。
ゆっくりと唇を離して、ギュッと抱きしめた。
高杉「なつ・・・。」
なつ「どうしたの?何かあったの?」
高杉「他の男に触らせるな・・・。」
なつ「へ?嫉妬?やきもち?」
高杉「バカっ!違うわっ!自惚れんなっ!」
なつ「あ!高杉!講義!討論始まってるよっ!行こう!」
また、はぐらされた・・・。
なつ・・・。俺は、こんなに待つのは初めてだぞ。
早く俺の女になれ・・・。
皆が萩から出て行った。
俺だって、江戸に行きたい。
4月。
おじいさまが亡くなった。
高杉「ぐずっ・・・。おじいさま・・・。ぐずっ・・・。」
涙が出る。泣くとは思っていなかった。
でも、やはり悲しいものだ。
数日すると、別の気持ちが出る。
足枷が取れた気分・・・。前より、自由になれるかも・・・。
そんな時に俺も江戸行きが決まる。