君の隣
自分の気持ち
しばらくした春に、高杉のおじいさまが亡くなられた。
いつも、悪く言ってたが、さすがに堪えてるようだった。
それに、高杉は何か焦っていた。
皆、遊学に、江戸や京へ行ったのだ。
焦るのもよくわかる。
松陰「これ見て。」
なつ「あぁ!久坂さんの書状!」
私は、書状を読ませてもらう。
なつ「ふふっ。楽しそうですね。」
松陰「ね?それと、これ・・・。」
もう一つ渡される。
なつ「高杉の・・・?」
読むと、内容は、余裕にみせている。
なつ「物凄く羨ましいんだ・・・。ぷっ。」
松陰「そう、頼まれた。藩で遊学させて欲しいから頼んで欲しいと。」
なつ「まぁ、気持ちはわかります。」
松陰「おなつ。頼みがあるんだ。京へ行って欲しいんだ・・・。」
なつ「京へ?でも、稔麿さんとか・・・。」
松陰先生が首を振る。
なつ「私にしか出来ない事ですね?」
松陰先生が首を縦に振る。
なつ「で?具体的に何を?」
私は、京へ向かった。
私は、幕府の老中、堀田殿を調べる。
なつ「開国の覚悟はない・・・。でも・・・。世の非難を避けるべく、朝廷の力を借りる。勅許を得るため・・・。しかも、すぐに、許可を得れると思ってる・・・。愚かな。孝明天皇がお許しになるわけない。あのお方は、攘夷論者・・・。」
すると・・・。
やはり、勅許を得られないまま・・・。
安政5年6月。
幕府は日米修好通商条約に調印した。
続いて、オランダ、ロシア、イギリス、フランスとも同じような条約を結んだ。
欧米列強が強かったためアジア各国と結んでいた不平等条約とよく似た条約だった。
しかも、開港する港は、横浜や函館で、幕府の管轄地だ。
即ち、幕府のみが、貿易の利益を得る。ということだった。
私は、すぐ萩に帰る。
そして、先生に報告した。
松陰「なんと・・・。許せんっ!!!」
先生は、開国反対者ではない。
先生が怒ったのは、孝明天皇が許していないのに勝手に、幕府が条約を結んでしまった事だ。
天子様を無視するとは何事か!という事だ。
先生の論争は、熱を帯びていく。
しばらくして、私は、高杉小忠太(高杉父)から、内密に呼び出された。
なつ「お初に・・・って違いますね。」
高杉父「あぁ。君が、城に忍び込んだ時にね。」
なつ「単刀直入にお聞きします。私に、お話とは、晋作様の事でしょうか?」
高杉父「さすが、隠密隊。察しがよい。その通り。晋作に近づかないでくれ。」
近づかないでって、向こうが近付いてくるんでしょ?
とは、言えない。
高杉父「アイツは、君みたいなのが物珍しいだけだ。そのうち飽きる。どこまで親密にしているかは、知らんがもし身ごもっても、認知はしない。家の人間とは認めない。晋作は、家に合った見分相応のおなごに嫁いでもらう。それは君ではない。アイツには付きまとわないでくれ。」
私は、拳を握っていた。
何で、こんな事を言われなきゃいけないんだ・・・。
別に恋仲でもないのに。
しかも、この言い方だと、私が高杉を誘惑しているみたいじゃない。
なつ「私達は、何もありません。別に、恋仲とかでもありません。同じ塾で学ぶ同志です。」
高杉父「アイツがあの塾に行ってるのも困っておるくらいだ!とにかく、近付くな!わかったな!」
私は、そのまま、家を出された。
私は走って、走って、走った。
なつ「はぁ・・・。はぁ・・・。はぁ・・・。苦しい・・・。」
走って苦しいのか、高杉の父に言われた事が苦しいのかわからない。
ただ、この気持ちだけはあった。
悔しい・・・。
私は心を落ち着かせてから塾に戻った。
こんな日に限って、討論は終わっていた。
なつ「はぁ・・・。今日は、賑やかな方が良かったな・・・。」
講義室に座って、月を眺めていたら、先生が入ってきた。
なつ「先生・・・。」
私は、先生に抱きついた。
先生は、優しく包んでくれた。
松陰「おなつの志は何ですか?」
なつ「え?」
松陰「おなつの志です。何ですか?」
なつ「私の志は・・・日本を変えたい!おなごでも政に参加できるような世にしたい!それを私が証明する!です。」
松陰「そうだったね。では、今、悩んでることはそれにどう影響しますか?」
なつ「っ!」
まるで、先生は、私に何があったかわかってるようだ。
松陰「僕はね、男の役目とおなごの役目とあると思ってる。おなごは、家に嫁いだ後、その家の祖先を大事にしないといけないと思ってる。そしてその家も・・・。君の今の悩んでることは、君の志を達成出来ないんじゃないかな?と僕は思う。もちろん、好いた人が出来ればまた状況も変わるだろうけどね。」
なつ「先生・・・。そうです!こんな事でくよくよしてる暇なかった!」
松陰「そうか・・・。君はきっと、志を達成出来るよ!」
なつ「先生!その時になったら、お願いしたいことがあります!今は、何をしてよいかわからないのですが・・・。」
松陰「わかったらいつでも言うんだよ?」
なつ「はい!」