君の隣
そんな時、高杉が江戸に行く日が差し迫った頃。
私は、高杉に、以前、高杉と関係を持った高杉家の納屋に呼び出されていた。
高杉「おい、なつ・・・。」
なつ「高杉!?」
高杉は、祖父様や父様に塾の出入りを禁止されていて、私達とは、影で書状のやり取りを主にしていた。
なので、顔を見るのは久しぶりだった。
なつ「今も激論だよ!行く?」
高杉「すぐ、戻らないといけない・・・。」
なつ「そっか・・・。久しぶり!あ・・・。江戸遊学、おめでとう。」
高杉「あぁ。やっとだな。」
なつ「そうだね。楽しみだね。」
高杉「あぁ。」
なつ「江戸のこといろいろ教えてよ?」
高杉「あぁ。」
なつ「高杉。『あぁ。』しか言ってない!」
すると・・・。腕を引かれて、抱きしめられた。
なつ「高杉!?」
ギュッと腕の力が強まる。
高杉「一緒に来るか?」
なつ「え?」
高杉「ここに置いていくのが・・・その・・・。心配だ。お前は尻軽だから。」
なつ「尻軽って、失礼過ぎ!」
高杉「本当の事だ。一緒に来い。」
なつ「・・・無理。」
高杉「先生か?」
なつ「そう。嫌な予感がする。あと、先生が動くんじゃないかな?その時に側で、お役に立ちたい。」
高杉「そうか・・・。お前・・・。まだ、先生の事・・・。」
なつ「あ!もう、お慕えしてるわけじゃないよ?この気持ちは、きっと、高杉が先生を思う気持ちと同じ。」
高杉は、少し安堵した顔つきになった。
そして、顎を掴まれ上に向かされた瞬間、口付けされた。
なつ「っ!」
私は、高杉の肩を押した。
すると、高杉の力はもっと強くなり、押し倒された。
なつ「痛っ・・・っ。」
口付けが深くなり、素早く着物を脱がされる。
なつ「ちょっ・・・っ。止め・・・てっ。」
すると・・・。
高杉は、私の名前を囁きながら、私を求める。
私は、高杉の肩を押す。
でも高杉は、私の手首を縫い止める。
そして、私は、高杉を受け入れてしまった。
そして、全てが終わり、私達は、抱き合っている。
なつ「高杉・・・。もう、こういうのやめよう・・・。私達、恋仲でもないし・・・。」
高杉「始まってもないし、俺は・・・。」
なつ「言わないで・・・。お願い・・・。」
高杉「?・・・。何かあったのか?」
なつ「ううん。何も・・・。」
すると、高杉は、また接吻をして、私を一晩中求めた。
そして、高杉は江戸に向かった。
幕府の大老になった井伊直弼殿が、将軍の後継者を慶福(家茂)様に決定させ、開国を推進した。
しかも、一気に反対派の弾圧(安政の大獄)に乗り出した。
そして・・・。
薩摩と水戸の尊攘派の間で井伊直弼の暗殺の計画があると、噂が流れた。
それをい聞いた先生は、11月6日。
門下生17人と血盟し、井伊様の下で安政の大獄を指揮を執る老中間部詮勝の要撃を企てる。
そして、先生は、武器弾薬は、藩政府に、軍資金百両は、同志の土屋に調達を依頼してしまった。
それを危険視した藩は、先生を野山獄へ入れた。
そして、周りの人達は、皆、白い目で見てきた。
私達を「乱民」と蔑んだ。
私達は、平穏な生活を脅かす輩の何者でもなかった。