君の隣
なつ「松陰先生・・・。また、戻ってきてしまいましたね。」
松陰「そうだね。ねぇ、おなつ、江戸へ行ってくれないか?僕は、ここでは、何も出来ない。高杉君達に書状を届けて欲しい・・・。君も、向こうで、彼らを説得して来て欲しい・・・。」
なつ「先生・・・。私も、京から帰って来たばかりで、血盟にも参加してませんよ?」
松陰「君は、僕の意見に反対なの?」
なつ「・・・。先生・・・。冷静になって下さい!」
松陰「では・・・。君は、絶交だ!」
なつ「先生っ!!!」
松陰「きっと、高杉君ならわかってくれる!早く行きなさい!これは、依頼だよ。宜しく。」
なつ「かしこまりました・・・。」
私は江戸に向かった・・・。
なつ「失礼します。」
高杉「なつ!」
桂「おなつちゃん!」
久坂「先生は!?」
なつ「正義にのめり込んでます・・・。時に声を荒げて・・・。歯止めが効かなくなってます。私は・・・。先生に冷静になってと説いたんですが・・・。絶交されました・・・っ。」
涙が滲む。
久坂「絶交?」
私は頷く。
すると高杉が、私を抱きしめた。
そして、書状と、皆で血判を添えて、桂さんが先生に届けることになった。
私は、江戸にいるとわかった兄姉のさつき姉上を訪ねた。
姉上は、どこかの側室を離縁し、次の将軍の側室となるため、準備をしているらしいという情報を得たからだ。
私は、先生が、獄に入ったと同時に、隠密隊は、お役御免となっていた。
なつ「こんにちは。さつき姉様。」
五月「おなつ、久しぶりだねぇ。お富さんは?」
なつ「だいぶ前に、紀州に行かれました。」
五月「なるほど。で、あんたも捨てられた?」
なつ「はい。」
五月「今は、何を?」
なつ「少し前までは長州の・・・。」
五月「隠密隊かい?」
私は頷く。
五月「なかなか腕を上げたんだね。でも、どうして?お役御免なの?なんか、失敗したのかい?」
なつ「私・・・。吉田松陰先生の門下生なの・・・。それで、少し危ない論争をされて、牢に入れられてしまって・・・。」
五月「なるほど。梅田雲浜(うんぴん)って人を知ってるかい?」
なつ「はい。確か、先生のご友人だったかと・・・。」
五月「じゃあ、その先生も危ないよ。」
なつ「え?どういう・・・。」
五月「雲浜と関係のある奴を江戸で裁いてる。死罪になってる奴も多い。」
なつ「そんな・・・。」
五月「まぁ、関係が薄いなら、すぐに帰されるよ!」
そして、私達は別れた。
高杉「今日、俺の所へ来い。」
なつ「高杉・・・。ごめん。行けない。」
すると、高杉は私の腕を掴み、部屋へ押し込む。
中に入ると、高杉は、私を抱き寄せた。
なつ「高杉・・・。」
高杉「俺は・・・。先生のお役に立ちたい・・・。でも、父上は・・・っ。俺は・・・。俺は・・・。」
私は、高杉をギュッと抱きしめた。
なつ「先生もきっとわかってくれる。だから、信じようよ。お父上に背いてまでしてはダメだよ?ね?」
高杉「お前も父上に言われたんだろ?だから、俺を避けてる・・・。」
なつ「それは・・・。」
そして、私を抱く腕を強め顔を覗いてきた。
高杉「なつ・・・。」
顔が近づき接吻されると思った瞬間、私は手で、それを止めた。
なつ「ダメだよ。」
高杉は、少し、不機嫌になったが、ギュッと抱きしめて、私の首筋に噛みついた。
なつ「ちょっと!」
高杉「拒否するお前が悪い。」
そして、それから、高杉は私を求めてきたが、私は、拒否し続けた。
なるべく、会わないようにも避け続けた。
私は、高杉をどう思ってる?
友達?それとも・・・。
私は、自分の気持ちを考えるべく、萩に帰る事を決意する。