君の隣
私は、細々と、情報屋として、暮らしている。
そんなときに、ペルリの船に乗り込んだ男が、捕まったとの知らせが、町中に広まった。
なつ「ペルリの船に乗り込んで、禁忌を犯した男・・・。情報として、持っていて、損はない・・・。」
私は、野山獄に忍び込んだ。
なつ「確か・・・。名前は、吉田・・・寅次郎。松陰?」
獄の中。何回か訪れた事はあったが、こんな光景を見たのは初めてだった。
囚人が誰かの講義を受けている。
なつ「何これ・・・。」
しばらく見ていると、教示している男も、牢に戻っていった。
なつ「教示してた奴も囚人・・・。くくっ。もしかして、あの教示してた男が、吉田殿・・・?」
直感的にそう思った。
私は、教示していた男の牢の上の梁に移動して、飛び降りた。
それと同時に、男の口を塞ぐ。
なつ「お聞きします。あなたが、吉田寅次郎様ですか?」
すると、男は、コクコクと首を縦に振った。
やっぱり。
私は、ゆっくりと吉田様の口を塞いでた手を退けた。
なつ「手荒な事をしてすみません。私は、情報屋のなつと申します。あなたのお話を聞きたくて参りました。」
寅次郎「私の事を?」
なつ「はい。あなたはペルリの船に乗り込んだのでしょう?是非、その辺のお話を聞かせて頂けますか?タダでとは言いません。それなりの対価を払います。何か、欲しい物があれば何なりと言って下さい。もし・・・。ここを出たいのなら、お手伝い致します。」
寅次郎「対価なんていいよ。どんな話が聞きたいの?」
なつ「全部!って言ったら、ダメですか?何故、ペルリの船に乗ろうとしたのか、からとか。」
寅次郎「いいよ。」
そして、私は、色々な話を聞いた。
空が、明るみ出した時・・・。
なつ「すみません!徹夜をさせてしまいました!」
寅次郎「いいよ。慣れてる。」
なつ「また・・・。来ても良いですか?」
寅次郎「もちろん。」
そして、私は、中山獄に入り浸った。
昼は、他の囚人と一緒に、講義を聞いた。
夜は、獄の中で、寅次郎様は、個人的に、講義をしてくれた。
いつの間にか私は、寅次郎様の事を先生と呼ぶようになった。
そして・・・。
先生がついに獄から出れるようになった。
なんか、出る出ないとなっていたが、出る決意をされたようだった。
なつ「今日で・・・。終わりですね・・・。もっと、先生の講義を受けたかったな・・・。」
寅次郎「何時でもおいで?おなつ。遠慮は無用だ!」
なつ「本当に?では、明日からでも?」
寅次郎「もちろん。」
なつ「ありがとうございます!」
そして、私は、先生に付いていった。