君の隣
ガタッ。
音がして、パッと目を覚ます。どうやら、寝ていたようだ。
すると、高杉がいる。
何で?
夢?
もう一度、目を瞑り寝てみる。
ペチッ
なつ「痛っ!・・・。夢じゃない・・・。」
高杉「寝ぼけるな。」
なつ「どうして?今日は、吉原で宴会でしょ?行かなかったの?」
高杉「顔だけ出した。お前は何故、来なかった?」
なつ「あの会合は、上士だけの集まりだからねー。」
高杉「お前・・・。桜田門でやったんだってな。やるじゃねぇか。」
なつ「ふふふっ。でしょう!?ちゃんと、皆の悔しさや怒りの気持ち乗せて斬ってきたから・・・。」
高杉「そっか・・・。礼を言う・・・。」
なつ「全然!」
高杉「・・・。」
なつ「・・・。」
気まずい。
高杉「なぁ、お前・・・。俺の縁談の事、知ってたのか?」
聞かれるよね。
なつ「知ってた。」
高杉「お前は・・・。俺のこと、どう思ってたんだ?」
なつ「今更、聞いてどうするの?私が、好いてたよって言ったら、奥方様に三行半を渡すの?違うでしょ?だったら、私の気持ちなんて聞かなくて良い。」
(※三行半:離縁状)
高杉「そうだな・・・。確かにそうだ・・・。こんな所まで来て悪かった。でも・・・。」
高杉は、私をギュッと抱きしめた。
なつ「ちょっと!何するの!?」
高杉は、私の首筋に唇を当てる。
高杉「少しだけ、このまま・・・。先生の仇・・・。討ってくれてありがとうな・・・。俺は・・・。動けなかった・・・っ。でも、なつが無事で良かった・・・。」
私・・・。ダメだ。
抱きしめられて、嬉しいと思ってる。
私は、高杉の背中に腕を回してギュッと抱きしめ返した。
なつ「ううん。動ける者が動けば良いんだよ。高杉が動かないといけない時がきっと来る。だから、高杉が、動けない時は私が動く。これを私はしたかったんだよ。心配してくれてありがとう。」
高杉「なつ・・・。」
甘い声・・・。耳から入る高杉の声だけで、身体の中が痺れる。
そして、少し体を離して見つめ合う。
この目を見てると吸い込まれそうだ・・・。
すると顔が近づいてくる。
なつ「ダメっ!」
私は、高杉の口元に手を置いた。
高杉は、悲しそうな目をした。
触れてしまったら・・・きっと、墜ちてしまう。
彼に、溺れて、彼を、欲しいと言ってしまう・・・。
私の大切な、愛しい人。
どうか、幸せになって・・・。
高杉の幸せに波風を立てたくない・・・。
高杉「なつ・・・。俺は・・・っ。」
それ以上、言わないで・・・。我慢できなくなる・・・。
私は、話題を変えた。
なつ「高杉・・・っ。あ!そうだ!飲みに行こう!良いところ見つけたの!ね?」
高杉は、「はぁ・・・」。と溜め息を零し、一度、ギュッと抱きしめた。
そして、高杉は、私の首筋に唇を這わせて、チュッと吸い上げた。
なつ「ちょっと!何するの!?」
高杉「虫除け。」
そして、近くの酒場へ行った。