君の隣
出逢い
なつ「なんだか、江戸の町とは、随分と違いますね?」
桂「何だか、萩を思い出す?」
なつ「んー。萩とは違います。河もないし・・・。」
私達は、市ヶ谷甲良(いちがやこうら)にある、試衞館を訪ねていた。
道場破りが最近流行っていて、助っ人で、桂さんが呼ばれた。
なつ「確か、試衞館って、天然理心流とかいう流派ですよね?桂さんとは流派が違うのに良いんですか?」
桂「まぁ、良いんじゃないかな?道場を守るのが一番だろうし。」
なつ「まぁ、看板取られたら終わりですしね?天然理心流って弱いのかな?」
桂「んー・・・。どうだろう?腕試ししてもらったら?」
なつ「頼んでみますっ!」
そして、江戸市ヶ谷甲良の屋敷に着いた。
なつ「すみませーん!」
「はいはーい!・・・っ・・・。」
何か、固まっちゃった、この人・・・。
なつ「あのー・・・。」
「あっ!ごめんなさい!こんな所におなごが来るのが珍しくて・・・。」
なつ「あぁ!なるほど!あの、田浦様から依頼で、来たんですが・・・。」
「あぁ!初めまして。私は、沖田と申します。」
なつ「あ!私は、なつと申します。で、こちらが、桂先生です。」
沖田「なつさんに、桂先生。宜しくお願いします。」
そして、道場に、招かれると、そこにいたのは、いかにも柄の悪い奴ら。
こんな奴ら自分らでなんとか出来ないくらい弱いなら、辞めてしまえばいいのに・・・。とは言えないが・・・。
私を見た、道場破りが厭らしい顔になりニヤニヤしながら、言ってきた。
道場破り「へぇ、おなご・・・。もし、俺らが勝ったら、今宵の相手でもしてもらおうか?」
なつ「私は、桂先生の弟子ですので、そう言ったことはお受け致しかねます。」
道場破り「はははっ。一番弱い奴の弟子!?色弟子か?」
なつ「桂さん、あいつ等を斬って良い?」
桂「挑発に乗るなんて、まだまだ修行が足りないよ?」
なつ「襲ってきたら殺ってやるのに・・・。」
いっそのこと、襲われるように仕向けて、バッサリ・・・。
そんな事を考えていると・・・。
案の定、桂さんが全てを倒した。
ゾロゾロと道場破りは帰って行った。
あれじゃあ、私でも勝てたかも・・・。
そして、私達は、夕餉をご馳走になっている。
近藤「いやいや桂先生の腕は素晴らしいものです!今日は本当にありがとうございました!」
桂「いいえ、お役に立てて良かった・・・。」
この人達は、あんなゴロツキより弱いのかなぁ?
そんな事を考えてると、一人の男が寄ってきた。
「あんた、今宵はどこに泊まるんだ?」
なつ「村の外れに宿がありましたよね?そこに泊まるかと・・・。」
「そうか・・・。」
なつ「もしかして・・・。今宵、来られるとか?」
何この男・・・。夜這い宣言!?美丈夫なのに勿体無い。下品だ。
「来て欲しいのか?」
なつ「そんな訳、無いでしょう!来たら、斬りますよ。」
「ふっ。面白いおなごだな。」
なつ「そりゃ、どうも。あなたのお名前を伺っていませんでした。お名前は?」
「土方 歳三。よろしくな。おなつ。」
そう言うと土方さんは、私の髪の毛を少し取り、口付けをした。
キザな奴。自分がモテてる事を自覚している奴だ。
少し睨んでいると、
沖田「土方さんは、おなごにモテますからねぇ。」
そう言って、横に座ったのは沖田さん。
なつ「沖田さん。沖田さんも十分モテるかと思いますけど・・・。」
沖田さんも、綺麗な顔ですよ。ここは、剣より顔で選んでるのか?
沖田「ふふふっ。そんな事ありません。あなたの方がモテるでしょ?」
なつ「そんなことありません。沖田さん!手合わせをお願い出来ませんか?」
私は、ここに来る前の事を思い出してた。そうそう、この人達の腕を見てない。
沖田「勿論、しましょう!」
道場に移動して、試合をする。
なつ「では・・・。いざ!」
パンパン!とお互い打ち合う。
そして・・・。
パァン。バキッ。
竹刀が折れた。
なつ「はぁ・・・。はぁ・・・。強いですね。沖田さん。」
沖田「はぁ・・・。はぁ・・・。はぁ・・・。なつさんも。」
これならあいつ等にも勝てるじゃない。
そう言うと、天然理心流は実践向きなんだとか。
時間が経つのも忘れて、試合をしていた。
桂「おい、帰るよ?」
そう、桂さんに、声をかけられて、ハッと我に返る。
なつ「沖田さん!決着はまた今度・・・。」
沖田「はい!では、また。」
そして、私達は、試衞館を出た。