君の隣
9月17日から21日まで、上田城下に滞在し、藩士達と剣術試合や談論をして過ごした。
どうやら、いつもの高杉に戻ったようだ。
そして・・・。
松陰先生の師の佐久間象山様に会いに行く。
私達は、高鳴る胸を抑えて、行くが、象山先生は罪人の為、会う事が許されない。
高杉「どうするか・・・。」
なつ「・・・あ!」
高杉「何だ?」
なつ「ふっ、ふっ、ふっ。高杉♪」
そして・・・。
高杉「う゛ーう゛ー。」
苦しんでるフリ。まぁ、演技力は目を瞑ろう。本人は乗り気で、楽しんでいるし。
なつ「すみません!私の主様が、急病で、蘭方医の象山に診て頂きたいのです!このお方は、長州藩の大組の嫡男!死なせるわけにはいかないのです!お願いします!象山先生に会わせて下さいっ!」
そして・・・。
象山「くっ、くっ、くっ。さすが、松陰の弟子!面白い!」
そして、私達は、夜中から明け方まで、話をした。
高杉・なつ「ありがとうございました。」
なつ「なかなか、面白い先生でしたね。」
高杉「あぁ。なかなかホラを吹くのが上手な先生だ。くくくっ。」
高杉「さぁ、行こう!」
徹夜になったが、そのまま、松平を発った。
次の日、越後の新井に宿を取る。
なつ「寒いと思ったら雪だ・・・。」
高杉「どうりで寒い訳だ。ほら。」
そういうと高杉は、私を抱きしめた。
高杉は、たまに、こうやって抱きしめたりする。
高杉「温かい・・・。やはり、人肌は気持ちが良い。」
なつ「高杉が言うと厭らしく聞こえる。」
高杉「欲情して欲しいのか?」
なつ「また、そういうこと言うでしょ!もう!」
高杉「もうしてる・・・。」
あまりにも小さい声で聞こえない。
なつ「何?」
高杉「何でもない。寒いから、もっとこっちへ来いと言った。」
そして、二人で一つの布団で眠った。
しかし、男女の関係はない。
それから、私達は、日本海に出て、難所に苦労しながら、越前福井に到着した。
なつ「ねぇ、高杉。横井 小楠(よこい しょうなん)先生ってどんなお方なの?」
高杉「横井先生は、肥後藩の学者なんだ。政に対して、進んだ考えをもってらっしゃる、肥後藩では、理解してもらえなかった。でも、越前藩の前藩主の松平 春嶽(まつだいら しゅんがく)様に見込まれて顧問として招かれてるお方だ。」
なつ「へぇ。面白いお方なんだ・・・。」
横井先生は、私達を快く迎えてくれた。
横井「政の目的は、民を富ませる事にある。そのためには、皆は無限の努力をするべきだ。もし、出来なければ、藩主であっても、辞職すべきだ。」
なんと、面白いお方!
今、越前で始められた政策は、民が生産した物を藩が買い上げて、藩営の交易を行い、積極的に民を富ませようとしていた。
なつ「なんて、立派な考え!」
高杉「あぁ!是非、横井先生には、明倫館の学頭に招きたいものだ!」
私達は、横井先生が書かれた、『兵法問答』を全文と、『学校問答』を半分ほど、書き写した。
松陰先生と同じくらい、面白いお考えを持った先生だ。
私は、久々に、胸が高鳴った。