君の隣
そして、私達は、萩に着いた。
大坂から京に入ろうとしたところ、高杉に無理やり舟に乗せられて、萩に戻った。
実に、半年に渡る長旅だったが、とても有意義な旅だった。
私は、藩主、敬親様に呼び出される。
井伊直弼の暗殺がバレたとか?
敬親「おなつ、ご苦労であった。」
なつ「勿体無いお言葉、ありがとうございます。」
敬親「ところでな、おなつ。お前に役を与えたい。」
なつ「え?」
敬親「お前に、特別隠密隊に任命したい。まぁ表向きは、特別隊とでもしておくか。」
なつ「特別隊・・・。」
信じられない・・・。また、お役目を貰えるなんて!
敬親「あぁ。どこの藩でも調べたい物があれば、独断で行ってこい。その代わり、必ず、報告はするように。」
なつ「ありがとうございます!私・・・っ。敬親様の為、長州藩の為、命を懸けさせて下さいっ!」
敬親「あぁ。頼んだ。これから、藩も色々な者達が、活躍をするだろう。それらの手助けもするようにな。」
なつ「かしこまりました!」
私・・・。特別隊・・・。敬親様、直々に・・・。
私は、俄然、やる気に満ちた。
私は、高杉に会いに行った。
なつ「高杉っ!私ね!敬親様から直々にお役目を貰った!特別隠密隊!表向きは、特別隊だって!皆の補助と好きな時に、好きな所を調べに行ってもいいって!私・・・。私・・・っ。」
自分の志の一歩前進だ!
涙が溢れる。
高杉「良かったな!なつ!良かったなぁ!」
ギュッと抱きしめられた。
いけないと思うが、今は甘えることにした。
なつ「ありがとう。」
体を少し離して、私は、高杉に思ってる事を言った。
なつ「私ね、京に行ってくる。」
高杉「京?」
なつ「うん!今、京は荒れてる。それは、すなわち、情報が多いということ。あと、稔麿さんにも会いたいし。」
高杉は、眉間に皺を寄せた。
高杉「危ないし、稔麿に会いに行くって・・・。」
なつ「大丈夫。それに、京にはお兄ぃもいるしね。」
高杉「あぁ。兄上か・・・。それなら仕方ない・・・。」
なつ「高杉は、明倫館の舎長になったんでしょ?凄いね!おめでとう!」
高杉「あぁ。」
そういうと、高杉は、私の腕を引き抱きしめ接吻した。
なつ「っ!」
バッと離れると、
高杉「祝だ。」
ニヤリと笑う。
私の顔は真っ赤だろう。時が止まるかと思った。
高杉「なつ?大丈夫か?」
高杉が私の頬を撫でる。
なつ「ちょ・・・。ちょっと何するの!」
すると、高杉は、また、わたしの腕を引き口付けた。
何度も啄まれる口付けを、拒否できない。
違う・・・。
私が・・・。私が、高杉に触れたいんだ・・・。
ごめんなさい。
少しだけ、このままでいさせて下さい。
私は、罪悪感を抱いて、彼の背中に腕を回した。
しばらく、高杉の熱を感じて、我に戻った。
なつ「ごめ・・・っ。ごめんなさい!・・・私、もう行くねっ!」
私は、高杉を見ずにその場を去った。
なつ「何やってるんだろう・・・私・・・。バカだ・・・。」
まだ、祝言を挙げて、一年も経たない人と・・・。
奥方様に申し訳ないよ・・・。
私・・・。最低だ・・・。
私は、苦い想いで、萩を出た。