君の隣
分かれ道~高杉Side~
江戸行きがようやく決まった。
他の塾の仲間は皆、江戸や京へ向かって、遊学しているのが正直羨ましかった。
やっとだ・・・。
でも、一つ気がかりがある。
なつだ。
松陰先生の元には、なつに縁談の話が沢山来ていた。
まぁ、なつには志があるから、それを叶えてくれる人でないとダメだ。と、先生は、断っていた。
俺は、縁談の申し込みを見ながら、
高杉「物好きがこんなにいるものとは・・・。」
そう呟くと、
松陰「では君も、物好きということになりますよ?」
と、先生が言っていたのを思い出す。
高杉「冗談じゃありません!」
と言ってみたものの気になって仕方ない。
あいつ、すぐ、男に色目を使うからな・・・。相手が勘違いしてしまう。
俺が江戸に行ったら、近寄る男を払う者がいない・・・。
しかも、今でさえ、父上達に、行動を制限され、塾に行けず、書状のみでやり取りしているのに・・・。
全然、会ってない・・・。何でアイツは会いに来ないんだ?
俺が、塾に行けないのは、書状を出しているから知ってる筈。
段々、イライラして来た。
俺は、なつを、納屋に呼び出した。
ギィ。
納屋の中で待っていると、遠慮がちに戸が開けられて、
俺が声をかけるとなつは驚いてこちらを見ていた。
何でコイツはこんなに驚く必要がある。
いつも気配を読んでるのに・・・。
すると、なつは、他愛のない話をし出す。
こんな話をするために呼び出したんじゃない。
俺は、本題に入る。
高杉「一緒に来るか?」
なつ「え?」
高杉「ここに置いていくのが・・・その・・・。心配だ。お前は尻軽だから。」
また、いつもの調子になる。
なつ「尻軽って、失礼過ぎ!」
高杉「本当の事だ。一緒に来い。」
なつ「・・・無理。」
やっぱりそうか。
高杉「先生か?」
なつ「そう。嫌な予感がする。あと、先生が動くんじゃないかな?その時に側で、お役に立ちたい。」
高杉「そうか・・・。お前・・・。まだ、先生の事・・・。」
コイツは、先生に特別な感情がある。
なつ「あ!もう、お慕えしてるわけじゃないよ?この気持ちは、きっと、高杉が先生を思う気持ちと同じ。」
俺は、安堵した。もう、コイツは先生のこと吹っ切れたようだ。
すると、コイツが欲しくてたまらなくなった。
顎を掴んで上に向かせ、口付けをした。
なつ「っ!」
少し抵抗をするなつを押し倒した。
なつ「痛っ・・・っ。」
口付けを深くし、肌に触れる。
なつ「ちょっ・・・っ。止め・・・てっ。」
高杉「なつ・・・。なつ・・・。」
俺のものになれ・・・。
全ての軽い抵抗を無視して、体を重ねた。
なつ「高杉・・・。もう、こういうのやめよう・・・。私達、恋仲でもないし・・・。」
高杉「始まってもないし、俺は・・・。」
いきなりなつは俺から距離を取ろうとした。俺は、自分の気持ちを告げようとした。
すると・・・。
なつ「言わないで・・・。お願い・・・。」
何かおかしい。いつものなつじゃない。
高杉「?・・・。何かあったのか?」
なつ「ううん。何も・・・。」
聞いても答えない。
なぜ言ってはいけない?聞きたくないのか?
なつの心を知るために俺は、なつを一晩中、求めた。
なつの寝顔を見ながら抱きしめて考える。
求めても、軽く抵抗はするものの、嫌がっている訳では無さそうだ。
やっぱり、お前は、さっぱりわからんおなごだ・・・。
少し気がかりを残して、俺は、江戸へ発った。