君の隣






そして、松陰先生が、江戸に来られた。



もちろん、江戸遊学ではない。



幕府に捕まってきたのだ。



なつが帰る前に言っていた。


梅田雲浜殿に少しでも関係があると捕って尋問を受けると・・・。




俺は、根回し用の金や、書物の差し入れなどをした。



以前、先生の過激な運動に参加できなかったから出来ることは精一杯したかったのだ。





そして、先生の疑いが晴れそうな時になつが来た。





父上の書状を持って・・・。





俺は、この時、何も知らなかった・・・。





なつがどんな想いでこの書状を持ってきたのか・・・。




そしてこの後、何が起こるのか・・・。




何通目だ・・・。




松陰先生が江戸に送られて来られたら頃から、家から、『帰って来い』という書状がよく届くようになった。



俺は、全て無視をして、松陰先生のお世話をしていたのだ。





そして、なつが現れた。




少しぎこちない笑顔で・・・。




高杉「はぁ・・・。またか・・・。」



なつ「今回は、私と一緒に帰ってもらうからね?」



高杉「父上も考えたものだ・・・。」



なつ「小忠太様の作戦勝ちだね。」





父上は、俺がなつの願いを断れないのを良く知っている。





そして、俺は、なつと一緒に帰ることになった。



そして、帰る前に、先生に会いに行った。




なつ「先生!行ってきます!先生?口は災いの元とも言いますので気を付けてくださいね?」



高杉「そうです!戻られるの楽しみにしております。」



松陰「二人ともありがとう。高杉君、これを。」



書状?前に相談をした、これからの自分についてのことか・・・。



松陰「高杉君、おなつは、必ず、どんな形でも側で助けてくれる。一つの形に捕らわれちゃダメだよ?」



高杉「?・・・。はい。わかりました。」



そして、私達は、江戸を出た。




これが先生との最後に交わした言葉になるとはこの時は微塵も思わなかった・・・。




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