君の隣




次の日、稔麿さんに連れられて、私は、丘の上に来ていた。




そこで、途中で買った団子を渡された。



少し暖かくなったもののまだ肌寒い。



団子を食べながら、景色を眺める。



稔麿「少し、肌寒いな。これを着ておくと良いよ。」



そう言って、稔麿さんは、自分の羽織を私に着せてくれた。



稔麿さんの匂い・・・。



なつ「稔麿さんの匂いって、何故か安心する・・・。」




すると、少し赤くなった稔麿さんは、残りの団子を頬張る。




私も団子を食べる。



なつ「京の甘味は美味しいですね。」




上品な味。庶民の店で買ったのに、皆、口が肥えてるんだろうな・・・。




そんな事を考えていると・・・。



稔麿「おなつちゃん!俺と・・・。俺と、夫婦になって欲しい。」



へ?


今、何て?



稔麿さんを見ると、稔麿さんは、真っ赤になっている。



そして、もう一度、稔麿さんは、



稔麿「俺と一緒になって欲しい。」



そう言った。




どうして?私達、恋仲でも何にもないのに・・・。



すると、稔麿さんは、



稔麿「ずっと・・・。ずっと好いていた。おなつちゃんが松陰先生の事を好きな時から・・・。」



ずっと?



私が松陰先生の事を好きで相談に乗ってもらってたときから?




だったら、私・・・。酷いことしてた・・・。





なつ「私・・・。知らなくて・・・。ずっと、相談・・・。」



稔麿「仕方ない。でも、それで、君に惹かれたから・・・。」




なつ「でも、私・・・。」



まだ、高杉の事を好きだし・・・。それに、私の志だって・・・。




目があった稔麿さんが、スッと私を抱き寄せた。




稔麿「今すぐとは言わない。だって、殿から直々に、お役目を貰えたんだろう?それなのにすぐ辞めてはダメだ。落ち着いてからで良いよ。それに、今は、高杉でいっぱいだろうから・・・。返事も、落ち着いてからで良い。俺の気持ちを知ってて欲しかったんだ・・・。」



そう言うと稔麿さんは、腕の力を強めた。



私・・・。稔麿さんの事、どう思ってる・・・?




好きだけど。この“好き”は何の好きなんだろう。



ぼーっとしてると、唇に、柔らかい物が触れた。



接吻されてる。




その温もりはすぐに離れていった。



稔麿さんを見ると、「ごめん」と言って、私を抱きしめた。




そして、私達は手を繋いで、宿に戻った。




『次に求婚されたら受けろ!』



勝兄ぃの言葉が頭の中をグルグル回る。






宿に着き、色々としていると、あっという間に夜が更ける。




あ・・・。どうしよう・・・。




考えていると、



稔麿「寝よっか・・・。」



私は体を固くする。



なつ「えっと・・・。その・・・。あの・・・。」



私があたふたしていると、稔麿さんはクスクスっと笑った。



稔麿「何もしないよ。まぁ、さっき、接吻しちゃったから、信用無いだろうけど・・・。」




なつ「そんなっ!信用はしてます!稔麿さんは、そんな事しないって・・・。」




稔麿「それはそれで複雑だけどね。」



なつ「え?」




今、結構、大胆な事、言ってませんでした?



バッと稔麿さんを見た私を、稔麿さんは、優しく、そして、楽しそうに笑ってた。






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