君の隣
私は江戸を訪れた。
用事はすぐに終わる。
どうやら姉上は大奥に入れたらしい。
そして、私は、高杉に会いに来ていた。
あれ?元気ない?
なつ「久しぶり!元気そうで良かった!ヨーロッパ・・・。」
「行けるようになったんだね。」と言おうとしたら高杉が顔をしかめて首を横に振った。
なつ「え?」
そういえば、藩で杉 徳輔殿が行くとか聞いたような・・・。
まさか・・・。
なつ「行けなくなったの?」
高杉「お前は、ズケズケと物を言うな。」
行けなかったんだ。
私が黙った事で、高杉も私が、何か言いたいのかわかったようで、
高杉「情けないよな。行けるって言いふらしたのに・・・。」
そう、一言、言った。
あんなに、喜んでいたのに・・・。
なつ「そっか。残念だったね。行く機会はまた沢山あるよ!いつまでも、しょげるな!」
私は、バシッと、高杉の背中を叩いた。
高杉「痛っ!この馬鹿力っ!」
そして、私は、江戸に借りてる自分の家に戻る。
だいぶ空き家となっているそこは既に、空き巣が入った後で、部屋中、荒らされていた。
なつ「まぁ、こう、なるよね・・・。」
すると、ガタッと音がして、音の方を見ると高杉が、固まって立っていた。
高杉「お前・・・。これ・・・。盗人か?」
なつ「・・・多分。まぁ、ずっと空き家になってたから、入られて当然だよね。ふふっ。」
明るく言ってみたものの高杉は哀れみの目。
まぁ、そうなるでしょうね。お金持ちのあなたからすれば・・・。
まだ、渋い顔をする高杉に、
なつ「大丈夫!盗られて困る物なんかないし、でも・・・。もう、売り払おうかな・・・。」
そう言うと、少し、怒気を含ませた声で、
高杉「家、無くなったらお前、どこ行くんだよ!男の所にでも行くのか?」
なつ「はぁ?何で?」
高杉「やっぱり、お前は、尻軽だっ!」
手をギュッと握られる。
なつ「どうしたの?」
高杉「少しこのままでいろ・・・。はぁ・・・。」
溜め息?
もしかして、ヨーロッパ行きがダメになったの落ち込んでる?
私も手を握り返した。
なつ「ねぇ。きっと、行けるよ。時期が今じゃ無かっただけだったんだと思うよ?」
高杉「あぁ・・・。なぁ・・・。お前・・・。」
なつ「何?」
高杉「いや。何でもない。」
そう言うと、高杉は、私から離れて、扉の前で、こちらを振り返った。
高杉「来い。」
なつ「へ?」
高杉「お前、宿無しだろ?宿に来い。」
なつ「いや。無理無理無理無理!」
宿なんて無理!二人きりだし!
高杉「良いから来いっ!」
そして・・・。
そして、部屋に泊めてもらった。
高杉はお役目で、藩邸に行った。部屋で一人になると、大きな溜め息が出る。
なつ「はぁ・・・。」
高杉も何を考えてるんだか・・・。
私は、慣れない、質の良い布団に包まれて、寝返りを何度も打つ。
・・・・・・。
寝れない・・・。
寝るのやめよう。
そして、私は、窓を開けた。
月が綺麗に輝いている。
やっぱり出よう。
私は、部屋に戻り、用事を思い出したという文を書いて置いて出た。