君の隣
目が覚めると、勝太郎にぃの家で寝ていた。
何で?
私が起き上がると、勝太郎にぃが、部屋に入ってきた。
なつ「どうして、私・・・ここに?」
勝太郎「俺が依頼を受けたからだ。」
なつ「依頼?」
勝太郎「あぁ。長州藩士、高杉 晋作から。」
なつ「高杉から・・・。」
勝太郎「お前が、何度、行っても連れ戻してくれと。あいつ等から守れという依頼。」
なつ「何で!?あいつ等は、稔麿さんを・・・っ。」
涙がジワジワ出てきて、こぼれ落ちそうになる。
それを、勝太郎にぃが、優しく拭ってくれた。
お兄ぃは、いつもそうだ。この手は、優しい。
勝太郎「なぁ。なつ。この時代に生まれた以上、こんな事は、身近に起こる。俺の所に来るか?武士といるよりか、良いんじゃねぇのか?」
その方が、きっと楽だ・・・。でも・・・。
もう、私は、引き返せない所まで、来ている。
松陰先生の志も遂げたいし、自分の志もある。
それに、隊の皆もいる。
なつ「ありがとう・・・。お兄ぃ・・・。でも、私は、皆と戦いたい!」
勝太郎「そうか・・・。」
そう言ってお兄ぃは、苦笑いをした。
どうしたら、お兄ぃに気がつかれずに、新選組の所へ行けるか・・・。
そうだ!
確か、長州藩から、もう、長州軍が出陣しているはず。
そこで、伝令係になればいい。
その隙を見て、新選組の所へ行けばいい。
そして、遂に、陣が整った。
私達、隠密隊は、伝令係だ。
色々な隊にあいさつに行くと・・・。
なつ「え・・・?久坂さん・・・?」
どうして!?久坂さんは反対派だったはず・・・。
九一さんまでいる・・・。
7月19日。
長州軍は、世子様の到着を待たずに、戦を始めてしまった。
私は、伝令係として、色々、馬を走らせた。
山田「なつ隊長!蛤門が、激戦地になっています!今、開いたようで、突入しています!」
私は、それを、上に、報告しにいく。
そして、木島様が撃たれて、後退した。
鷹司邸には、久坂さんがいるっ!
私が鷹司邸に入ると、久坂さんが、倒れていた。駆け寄り、抱き上げた。
なつ「久坂さんっ!」
久坂「はぁ・・・。はぁ・・・。おなつちゃん・・・。逃げろ・・・。ここは・・・。もう・・・。」
なつ「何を言うんですか!」
久坂「俺は・・・。ここで、果てる。高杉に・・・。俺達の志を・・・。」
私は、頷く。
なつ「すぐ手当てを・・・。」
久坂さんは首を横に振る。
そして、小刀を出して、切腹をしようとしていた。
なつ「久坂さんっ!止めて!!お願い!久坂さんがいなくなったら、文さんは?ずっと、萩で待っているんですよっ!」
久坂「おなつちゃん・・・。文に愛していると・・・。だから・・・。幸せになってくれと・・・。文を・・・。よろしく頼む。」
そして、
久坂「介錯を頼む。」
そして、久坂さんは、切腹し、私が、介錯をした。
今までで、一番つらい出来事だった。
私は、焼け落ちる鷹司邸から飛び出た。
途中、会津藩と薩摩藩に狙われるが、何とか逃げた。
なつ「はぁ・・・。はぁ・・・。今は、涙は閉まっておく。三木様の所へ・・・。」
宝積寺に入ると三木様の元に急ぐ。
なつ「三木様っ!」
三木「あぁ。隠密隊隊長か・・・。おなごなのにこんな所までよく来たな。」
なつ「すぐに、お逃げ下さいっ!」
三木「もう・・・。ここは、ダメだな。俺は、逃げるくらいなら、自害する!」
なつ「そんな・・・。」
三木「この事を速やかに、世子様に伝えよ!」
広田「これを高杉殿に!」
この人は、高杉と、薩摩藩主を暗殺しようとしていた人だ。
そして、そこにいた、17人は、私を追い出すと、切腹した。
私が、山を降りていると、見知った顔があった。
なつ「あれは・・・。」
新選組・・・。
私は、刀に手をかける。
しかし・・・。飛び出せない・・・。沢山の人達の想いを届けないといけない。
ここで、私が、差し違えて、命を落としたら、私が、預かった人達の想いが、届けれなくなる。
私は、唇を噛んでその場を、離れた。
私は、上にそれを伝えた。
書状で、久坂さんの最後を出来るだけ詳しく文さんと高杉に知らせた。
よし・・・。
行こう・・・。
私は、馬に乗り、踵を返した。
新選組が向かっていた、宝積寺に向かった。
そして・・・。
なつ「やっと、会えましたね。沖田さん。」
木の上から、飛び降りた。
沖田「あなたもしつこいですね。武士なら、皆、この位、覚悟しているでしょ。でも・・・。あなたの首を差し出すのも良いですね。おなごとは思いませんからね?」
なつ「良いですよ。私も、あなたの首をもらう・・・。
私は、銃を撃った。
サッと、沖田さんが、避ける。
パン。パン。パン。
カチ、カチ。
私が、弾を詰めようとすると、斬られそうになる。
なつ「きゃっ。」
私は、銃を懐にしまう。
カキン。カキン。
横から、平隊士らしき人が私を囲む。
沖田「あなたの剣はやりにくい・・・。まるで、土方さんの相手をしてるみたいだ・・・っ。」
なつ「それって、良い意味ですか?」
沖田「ははっ。喧嘩みたいな剣ってことです。」
しばらく、刀を交わらせていると・・・。
ボンッ。
と音がして、黙々と煙が立ち込める。
何これ?敵?
すると、誰かに、抱き抱えられた。
なつ「ちょっと!ふぐっ。」
辺りが、見渡せるようになったとき、だれに担がれてるのかがわかった。
なつ「勝兄ぃ・・・。」
勝太郎にぃは、私を、米俵のように担ぎ上げて、家まで戻った。
勝太郎「お前の考えてることぐらいわかる。」
なつ「そっか・・・。バレてたか。」
勝太郎「ほれ、これ持って、帰れ。」
なつ「あ・・・。私からの書状・・・。それに、広田様の・・・。」
勝太郎にぃが託されたのか・・・。
その時・・・。入江 九一さんと有吉 熊次郎様が討ち死にしたとの知らせが来た。
なつ「そんな・・・っ。九一さんっ!熊さんっ!・・・っ。皆・・・。皆がっ・・・。」
涙が溢れる。
苦しい。
その時、どこからか、『火事だぁ!』『火事だぁ』と聞こえた。
なつ「火事!?」
私は、飛び出した。
勝太郎にぃが私の頭を叩く。
なつ「痛っ!」
勝太郎「お前の立場で、何を普通に、出て行ってる!」
私は、お兄ぃに抱き付いた。
なつ「お兄ぃ・・・。ありがとう・・・。もう行く・・・。」
勝太郎「くれぐれも気を付けろ。」
そして出て行くと長州藩邸が火に囲まれていた。
野次馬の中に見知った人がいた。
物乞いの格好をしているが、あれは、間違いない。桂さんだ。
私は、その物乞いについていった。
なつ「桂さんっ!」
物乞いは一瞬止まり、私の顔をじっくり見た。
桂「なつ?」
なつ「桂さんは無事だったんですね!良かった!一緒に帰りましょう!」
桂「いや。俺は、帰らない。」
なつ「どうしてですか?」
桂「出石に行く。誰にも言うな。時が来れば、必ず・・・。」
なつ「高杉には・・・。そのように伝えます・・・。」