君の隣
そして、3回目の談判・・・。
終わって、高杉が来た。
なつ「お疲れ様。」
清々しい顔をしている。
なつ「その顔は、良い知らせ?」
高杉「あぁ。賠償金は、幕府に言えと言った。長州は一切払わなくて良い事になった。砲台は修復しない。後は、海峡を通る権利などだ。」
なつ「さすがだね。」
高杉「下関が、商いで開かれる。」
なつ「幕府は許さないでしょう?」
高杉「船員達が、物を補う場だ。」
なつ「なるほど。」
長州藩は、攘夷を止めたという証になった。
しかし、これだけでは、終わらなかった。
幕府が長州征伐に乗り出した。
8月22日。
朝廷はついに、長州藩に朝敵の烙印を押した。
井上さんは、襲撃され、次の日、周布さんはが自決した。
高杉は10月17日政務座を退き萩へと戻った。
俗論派が政権を握ったのだ。
10月24日。
私は、身支度をしていた。
奇兵隊を解散され、正義派の周布さんもいなくなり、井上さんも瀕死の状態。
私の所にも、襲撃を受けていた。
高杉「おい。行くぞ。」
なつ「わかった。」
私達は、行商を装い、逃げる算段をつける。
なつ「樽崎さんはいいの?」
高杉「誘ったが無理だった。俺は・・・。志を果たすためなら、逃げてでも、生きる。」
私達は、山口の井上さんを見舞う。
なつ「井上さん。今は、怪我を治すことだけを考えて下さい。」
井上「ありがとう。」
高杉「必ず、政権を奪い返す。」
そして、奇兵隊は山間部で息を潜めていた。
赤祢さんは、目の病で故郷に帰っていた。
山県「高杉さん。よくご無事で。」
高杉「なつが気付いてくれた。武力で、政権奪取しよう!」
山県「高杉さん。それは出来ない。危険すぎる。」
しばらく、説得したが、無理だった。
そして、私達は下関を目指す。
高杉「九州で、奇兵隊を募ろう。」
なつ「そうだね。」
下関に着いた私達は、白石邸に転がり込んだ。
福岡脱藩浪士の士中 村円太と落ち合った。
この士中さん曰わく、佐賀藩主様と福岡藩主様は幕府の長州征伐に批判的だった。と言う。
高杉が出向いて、両藩を始めとする九州を説得して、軍事支援を得ようと言う。
私は、疑問に思う。
確かに、この両藩は批判的ではあったけど、幕府の方針に対しての批判であり、決して、長州藩に対して共感した訳ではない。
しかし・・・。
高杉は、この旨すぎる話に乗ってしまう。
なつ「ねぇ、高杉!よく、考えてから・・・。」
高杉「何を言う!善は急げだ!」
九州へ渡ると、やはり、私の考えが当たった。
佐賀藩でも大変になっていて、疲弊していた。
他の藩を助けるという余裕はなかったのだ。
高杉「他力本願すぎた・・・。」
なつ「でも、他の藩も、疲弊してる・・・。」
そして、私達は、平尾山荘に隠棲している野村 望東様の所へ潜伏した。
このお方は、元は、筑前藩士の野村 貞貫様の奥方だった。
旦那様の没後、仏門に入られた。
ここで、私達は、好機を伺っていた。
高杉「なぁ、なつ。お前・・・。京で何かあっただろう?」
なつ「え?」
高杉「お前を見ていたらわかる・・・。」
私は、久坂さんの介錯をしたこと。
仲間が死んでいったこと。
戦争を見て、恐ろしかったこと。
すべて吐き出すように、高杉に話した。
なつ「ふっ・・・。ズズッ・・・。」
高杉は、私を抱きしめて、全て、聞いてくれた。
そして・・・。
口付けされた。
ゆっくり、唇が離れた。
高杉「次、会ったら、口付けしようって約束だった。」
なつ「うん・・・。」
一度、触れたら、ダメだ・・・。
もっと、触れたくなる・・・。
私達は、何度も、口付けを交わす。