君の隣
藩政を正義派が取った後、大きくなりすぎた奇兵隊の事で、高杉は、頭を悩ましていた。
高杉「はぁ・・・。」
私は、高杉の横に座り、お茶を淹れた湯呑みを高杉の横に置いた。
高杉は、チラリと私を見て、私が置いた湯呑みに口を付けた。
なつ「悩んでるね・・・。」
高杉「あぁ。奇兵隊は、いわゆる、臨時の隊にすぎない。だから、皆に元の生活に戻らせたい。だが・・・。」
なつ「納得しないだろうね。皆、武士になるのを夢見て来てる。」
高杉「武士にさせるつもりはハナからない。元々、大組の八組が強ければ、奇兵隊なんぞ作らなくて良かったんだ。」
なつ「まぁ。高杉の立場から言うとそうだね・・・。でも、きっと、皆、納得しない。知ってる?奇兵隊の子達は、次男、三男が多いんだよ。皆、帰る場所はないよ。きっと・・・。」
高杉「知ってる。じゃあ、どうしろと?」
なつ「うーん・・・。どうしたら皆、納得してくれるのかな・・・。でも、戦いになったら、また、奇兵隊が必要になる。」
高杉「あぁ。戦いの時は、藩を挙げて、皆で戦う。何もない時は、今まで通りの生活をするというのが理想だな。」
そうして、奇兵隊や他の隊は、細かく分けて、散り散りに飛ばして、表向きは、そこを護らせるという大義を与えた。
しかし、しばしば、理由を付け山口の藩中枢に押し掛けてくる隊もあった。
高杉は、武士の下に奇兵隊を持ってきたかったが、なかなか上手くいかない。
しばらくして・・・。
高杉は、とんでもない事を言い出す。
高杉「なぁ、なつ・・・。お前は、俺の行くところについてくるか?」
なつ「うん!もちろん!どこにいくの?」
高杉「エゲレスだ。」
今、何て?
なつ「何て?」
高杉「エゲレスに行くから、ついて来い。と言った。」
なつ「エゲレス!?」
高杉「あぁ!行くぞ!」
すると、井上聞多さんが、慌てて、止める。
井上「高杉さん!今は、ダメだ!諸隊の歯止めが利かなくなる!」
なつ「そうだね。大変になる。」
高杉「チッ。」
高杉が舌打ちをする。
高杉「必ず、行くぞ?」
なつ「うん!行こうね!」
私は、こんな、約束だけでも高杉に誘われたということが、嬉しかった・・・。
高杉達、藩士にとって、奇兵隊は悩みの種になる。
諸隊の力を使わないと、藩は守れない。
しかし、自分達の権利を主張してくる諸隊・・・。
悩みの種は、大きくなっていく。