明日晴れるといいね!
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 美和はこの時、涼子に全てを話したい気持ちになっていた。そうすることでこの心の苦しみを涼子と共感できると思った。これは反面ずるい考え方かもしれないが、今の美和には涼子ならそれら全てを受け入れてくれる核心のようなものがあった。

 美和は涼子の方を向くと
 「涼子さん、実は父が女性と家を出たんです。それも私と同学年の子と」

 涼子は暗い海を見つめたまま何も言おうとはしない。遠くで海鳥の声がした。
 美和もそのまま黙ってしまった。

 と涼子が突然口を開いた。
 「で、お父さんの消息は分かってるの」
  美和は首を横に振った。

 「うん、それってちょっときついかも」
 涼子は海を見つめたままそういった。
 
「わたしんちわさ、中学のとき両親が離婚してそれ以来父親の顔見てないし、母親も他の男と再婚しちゃって今は音信不通。まあ男と女いろんなことがあるわ。でも美和にはお母さんがいるじゃん。」

 「うん」
 「で、これからどうしようって思ってる?」

 「とりあえず、大学に行きたいんです。だから頑張らないととは思ってるんですけど、なかなかその気力が湧いてこなくて」

 「いいじゃん。あせることないし、気長にやろうよ。」
 波音も静かに二人の話を聴いていた。

 「なら少々の夜更かしはOKだね。わたしさ、高校中退しちゃったから勉強教えてもらおかな」

「教えるなんて。なら一緒に勉強しませんか。そのほうが一人でやるより楽しいし」
 
「ほんといいの。じゃまにならない?」

「ぜーんぜん。そのほうが学校みたくていんじゃないですか」

「なにもお礼できないよ。」

「何言ってるんですか。一緒に勉強するのにお礼する人なんていませんよ!」
 二人は夜空に向かい声を上げて笑った。

 とかすかに地平線の辺りが白みかけてきた。
 「お、そろそろご来光ってやつですか」

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