明日晴れるといいね!
「すいません。この場合ご来光って言うのは正しい言い方でないような。普通御来光って山とかの高台から望む日の出を言って、この場合私もよくは知らないんですけど普通に日の出といえばいいような」
「さ~すが。あんたといると勉強になるわ。
恥じ掻かないようこの調子でこれからもよろしくっ」
美和は恐縮し、涼子は笑っていた。
二人はその美しさに目を奪われていた。日の光が波を伝わりまっすぐこちらへ向かって伸びて来る。あたり一面が輪郭を見せ始め、まさに全ての具現化の象徴それが太陽そのものであるかのようにその雄姿を今現そうとしていた。
美和は穏やかな気分でその白みかけた空を見つめていた。
常にいらつく自分がいて、自分だけが不幸という二文字にさらされていると思っていた。でもこうして理解してくれる涼子という新しい友を得、また心にゆとりが生まれると自分の感受性が騒ぎ始めるのを改めて感じていた。
日が昇る様を黙って見つめている二人。刻一刻と太陽は陽の眩しさを増し、その威厳さゆえに凝視しがたい明るさをたたえ始めた。
深く暗い深淵にいても一筋の光明がやがて明るく辺りを照らしてくれるそんな気分を美和は味わっていたのかもしれない。
「どう、感動してる」
美和はうなずいた。
「涙出そう」
そう言った涼子は既に涙ぐんでいるようであった。
すっかり姿を現した太陽の姿は有史以前から繰り返されてきた営みであり、生きるものの源と言っていいだろう。
その恩恵に二人はあずかっていた。すっかり日も昇り海岸を歩く人もちらほら現れはじめた。
波が優しく朝の挨拶をしてくれている。
「どこかでモーニングでも食べよっか」
涼子が言った。
二人はもと来た砂地を通りバイクのところに戻った。二人を朝日に輝くバイクが迎えてくれた。
「おはよう。今日もよろしく」
涼子がバイクに明るく声を掛けポンと座席を叩いた。