狂気前夜
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僕は不幸せでした。いつも心の安らぎを求めて、いつも得体の知れない何かを求めて焦っていました。人を完全に満足させるもの、其の万古不易なる巌の上に彼の精神をどっかと据え、其の見事な美しさをただ賛美する事が即ち涅槃、そう云うものを求めていました。しかも、それを発見する前に人生が終わってしまうかも知れない!僕は人生の基盤を求めていて、そしてそれを見つける前に肝心の人生が終わってしまう。何と笑止な事でしょう。僕の不安の程を理解して貰えると思います。