都合のわるい女
……と、憤慨しつつも、タカハシを後ろに乗せて、俺はバイクで走り出す。


まぁ、いつものことだ。



風がびゅうびゅうと吹きつけてくる。


ヘルメットごしの景色が、流れるように過ぎ去っていく。



「ニッシー、バイト5時からだから!」



風に負けないように大きく声を張り上げて、タカハシが背中から話しかけてきた。



俺は前を向いたまま、「へいへい!」と答える。



「急いでよね!!」


「分かってるよ!」


「遅刻したらニッシーのせいだからね!」


「はぁ!? なんでだよ!?」


「とにかく急いで!
でも、事故ったら殺す!!」


「どんだけ我儘なんだよ!」



あはは、と笑うタカハシは、俺の腹に腕を回して、ぎゅうっとしがみついている。


タカハシの胸のあたりの柔らかな膨らみが、俺の背中に触れる感覚を、必死で頭から追いやる。



心頭を滅却すれば、火もまた涼し。


心頭を滅却すれば、胸もまた硬し。




………いや、無理だ。


やっぱ、めっちゃ柔らかい!!




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